hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

三浦しをん『木暮荘物語』を読む

2011年06月23日 | 読書2

三浦しをん著『木暮荘物語』2010年11月祥伝社発行、を読んだ。

小田急線・世田谷代田駅から徒歩5分、おんぼろ木暮荘は、6室中、4室に人が住んでいる。
1階に住む大屋の木暮さんは70歳過ぎのおじいさんだが、死ぬ前にもう一度セックスがしたいと願いながら愛犬ジョンと暮す。隣の女子大生、光子の部屋には複数の男友達が出入りする。光子の生活を2階から覗くサラリーマンの神崎。そして、2階には彼氏と元カレと3人で暮らす羽目に陥っている花屋店員の繭がいる。
その他、繭の働く花屋のオーナー佐伯夫婦、白いバラを毎週買いにくる謎の客ニジコ、木暮荘の庭の犬ジョンにシャンプーしたいと思っているトリマーの美禰。美禰と心を通わすヤクザの前田。

初出:「Feel Love Vol.11-Vol.17」2007年夏から2009年夏



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

それぞれ問題を抱えながら誠実に生きたいと思う彼らが愛おしい。それぞれのダメキャラぶりが三浦さんらしく、楽しく、ちょっと切なく読める。今はほとんど無くなってしまったが、昔はアパートといえば、木造の床がキイキイ音がするようなボロ屋が普通だった。もっとも私の”昔”は50年ほど前のことだが。


三浦しをんの略歴と既読本リスト



以下、あらすじ

シンプリーヘブン
木暮荘203号室に住む、坂田繭は、フラワーショップにと勤める地味な女の子。彼氏の晃生としゃべっているところに元カレの瀬戸並木が現れる。並木は3年前、別れを告げることもなく、写真をとるため海外に旅立っていたのだ。繭と、気持ちのはっきりしない晃生、ぷいといなくなる並木の三人暮らしが始まる。

心身
犬のジョンとともに、家を出て、木暮荘に引っ越してきた大家の木暮は70歳(?)程。セックスしたく、悶々として、高齢者専門のデリヘルに電話をかけたが、・・・。

柱の実り
トリマーの峰岸美禰(みね)は、通りかかるたびに、木暮荘で飼われているジョンをシャンプーしたいと思る。そして、世田谷代田駅のホームの柱に異様な水色の突起を発見する。
異常な突起に誰も気づくことはない。ある日、カタギには見えない男が美禰に声をかけた。
「お嬢さん。そいつはいったいなんだ?」

黒い飲み物
繭が勤める「フラワーショップさえき」の店長、佐伯さんは、併設された喫茶店のマスター、旦那さんの入れるコーヒーが泥の味がする、と最近感じていた。そして夫が夜中にこっそりと家を抜け出すようになっていた。店の常連客がいう。「泥みたいな味がするときは、私の経験上、浮気をしています」


201号室に住む神埼は、畳を持ち上げ、節穴から下の女子大生光子の102号室を覗き、木暮荘に響き渡る「ああん、ああん」の発生源を知ることになる。神崎は覗きに熱中し、男3人と付き合い自堕落な生活を続ける彼女の姿に、異性に対する幻想が打ち砕かれる。しかし、そのうち一人で逞しく生きる彼女の姿に憧れすら抱くようになっていく。

ピース
女子大生光子は子どもを生むことができない。そんな光子が、「はるか」と名付けた赤ん坊を育てるはめになる。「はるか」は木暮荘のアイドルになるが・・・。

嘘の味
繭のことを諦め切れなかった元カレの並木は「フラワーショップさえき」を遠くから覗きみる。毎週火曜日にシンプリーヘブンを5本買っていく髪の長い女性ニジコは、そんな彼に自分の住所を教える。
ニジコには特殊な才能があり、料理を一口食べると、「嘘をついているときは、砂の味。浮気をしていたら、泥の味」と解るのだった。自分で作る料理まで砂や泥の味になったら、ニジコは食べるものがなくなってしまう。嘘をつかず、浮気をせずにすむように、ニジコはひととの接触を極力避けていた。そして、並木は繭をあきらめ、ニジコは、・・・。



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