田中冨久子著『女の老い・男の老い 性差医学の視点から探る』NHKブックス1177、2011年4月NHK出版発行、を読んだ。
表紙裏にはこうある。
体の構造、機能、仕組み、病気の症状・原因、加齢による変化、性ホルモンの働きといったことを説明しないと、女と男の老いの差は説明できない。複雑で細かいことを要領よく説明しているが、やはり真剣に読まないと理解できない。しかも近年明らかになったことが多く、研究成果の紹介もあるのだから、話はややこしい。
田中冨久子(たなか・ふくこ)
1964年 横浜市立大学医学部卒業、1969年横浜市立大学大学院修了、医学博士
1985年 横浜市立大学医学部教授(生理学
2011年 田中クリニック横浜公園(更年期女性外来/生活習慣病外来)院長
著書:「女の脳/男の脳」、「脳の進化学」、「とことんやさしい脳の本」、「面白いほどよくわかる!脳とこころのしくみ」、「がんで男は女の2倍死ぬ」、訳書に、「性差医学入門」
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
加齢による病気、具体的老化現象を、まず医学的に説明し、その後、その現象の僅かな男女差を説明するので、どうしても詳しく、細かい話になる。元々、老化現象自体が明快にはなっていない現状で、その男女差を明らかにすることは、研究は必要でも、一般向け解説は困難だと思った。
読んでいて、途中で、要するに結論は何なの?と聞きたくなる。一般向けなら、データ、根拠など示さずに概要だけ説明すべきだと思う。
巻末には、120程の欧文文献と、70程の和文文献が掲載されている。一般向けの解説本を読む人が参考にするだろうか?
以下、私のメモ
序章 老いを知る
「老化」の定義にも、病気との関係で、以下の4つある。
「人が生殖機能を失ったあとに(50歳前後)加齢とともに起こるさまざまな衰退現象」
「30歳までは正常老化、超えると病的老化が加わる」
「恒常的維持機能や予備力の低下」
「加齢自体が進行を遅らせることができる病気の一つ(加齢は誰もが罹患している死亡率100%の病気)」
人間以外の哺乳類は、生殖期が終わると同時に死ぬ。
女性は、卵巣ホルモンであるエストロジェンに守られているが、閉経後は骨粗しょう症、高コレステロール症、認知症などエストロジェン欠乏症により、「不健康寿命」を40年近く生きる。
男性の生殖機能は50歳を過ぎると半分になるが完全にはなくならない。
男性は、精巣ホルモンであるテストステロンに駆られ競争社会を過ごし、タバコ、酒、ストレスにより、生活習慣病にかかり、後生殖期にがん、脳血管疾患、心疾患により女性より7歳以上早く死ぬ。
第1章 女の更年期・男の更年期
「ヒトは子どもの類人猿」。ヒトは前頭連合野を発達させ、いい年をして遊ぶ動物になった。したがって、後生殖期を楽しく生きたい。
第2章 脳の老化に性差はあるか
アルツハイマー型認知症の女性発症率は男性の2倍~3倍(女性の寿命が長いためとの反論もある)。
第3章 血管と骨の老化
血管、骨、関節、筋肉の老化とエストロジェン、アンドロジェンの関係
第4章 性ステロイドホルモンの知識
終章 長寿遺伝子と性ステロイドホルモン
「カロリス」とは ”caloric restriction” で、カロリー制限のこと。栄養不足に注意しながらカロリー摂取を減らすと、原生生物から哺乳類まで多くの種で寿命が大幅に延びる。カロリー制限により、インスリン/IGFシグナル伝達系の活動を抑制することによって長寿遺伝子を活性化し、寿命を延長する。
(最も私は、今のところとくに長生きするつもりはないし、ましてやそのための厳しいカロリー制限はごめんこうむる)
著者は、女性にホルモン補充療法を勧めている。
表紙裏にはこうある。
ヒトだけが迎える特別な時間「老年期」。その姿は、女性と男性で大きく異なっていた。私たちの悩や心臓、骨、筋肉はどのように保たれ、認知症や心筋梗塞、骨折などにはどのような性差があるのか。その謎を明らかにするため、エストロジェンなど性ステロイドホルモンに注目。
日本の性差医学の第一人者が、進化史的な視点もふまえ、長寿遺伝子など最新の研究成果をふんだんに盛り込みながら、ヒトという生物の老いの姿に迫る。
日本の性差医学の第一人者が、進化史的な視点もふまえ、長寿遺伝子など最新の研究成果をふんだんに盛り込みながら、ヒトという生物の老いの姿に迫る。
体の構造、機能、仕組み、病気の症状・原因、加齢による変化、性ホルモンの働きといったことを説明しないと、女と男の老いの差は説明できない。複雑で細かいことを要領よく説明しているが、やはり真剣に読まないと理解できない。しかも近年明らかになったことが多く、研究成果の紹介もあるのだから、話はややこしい。
田中冨久子(たなか・ふくこ)
1964年 横浜市立大学医学部卒業、1969年横浜市立大学大学院修了、医学博士
1985年 横浜市立大学医学部教授(生理学
2011年 田中クリニック横浜公園(更年期女性外来/生活習慣病外来)院長
著書:「女の脳/男の脳」、「脳の進化学」、「とことんやさしい脳の本」、「面白いほどよくわかる!脳とこころのしくみ」、「がんで男は女の2倍死ぬ」、訳書に、「性差医学入門」
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
加齢による病気、具体的老化現象を、まず医学的に説明し、その後、その現象の僅かな男女差を説明するので、どうしても詳しく、細かい話になる。元々、老化現象自体が明快にはなっていない現状で、その男女差を明らかにすることは、研究は必要でも、一般向け解説は困難だと思った。
読んでいて、途中で、要するに結論は何なの?と聞きたくなる。一般向けなら、データ、根拠など示さずに概要だけ説明すべきだと思う。
巻末には、120程の欧文文献と、70程の和文文献が掲載されている。一般向けの解説本を読む人が参考にするだろうか?
以下、私のメモ
序章 老いを知る
「老化」の定義にも、病気との関係で、以下の4つある。
「人が生殖機能を失ったあとに(50歳前後)加齢とともに起こるさまざまな衰退現象」
「30歳までは正常老化、超えると病的老化が加わる」
「恒常的維持機能や予備力の低下」
「加齢自体が進行を遅らせることができる病気の一つ(加齢は誰もが罹患している死亡率100%の病気)」
人間以外の哺乳類は、生殖期が終わると同時に死ぬ。
女性は、卵巣ホルモンであるエストロジェンに守られているが、閉経後は骨粗しょう症、高コレステロール症、認知症などエストロジェン欠乏症により、「不健康寿命」を40年近く生きる。
男性の生殖機能は50歳を過ぎると半分になるが完全にはなくならない。
男性は、精巣ホルモンであるテストステロンに駆られ競争社会を過ごし、タバコ、酒、ストレスにより、生活習慣病にかかり、後生殖期にがん、脳血管疾患、心疾患により女性より7歳以上早く死ぬ。
第1章 女の更年期・男の更年期
「ヒトは子どもの類人猿」。ヒトは前頭連合野を発達させ、いい年をして遊ぶ動物になった。したがって、後生殖期を楽しく生きたい。
第2章 脳の老化に性差はあるか
アルツハイマー型認知症の女性発症率は男性の2倍~3倍(女性の寿命が長いためとの反論もある)。
第3章 血管と骨の老化
血管、骨、関節、筋肉の老化とエストロジェン、アンドロジェンの関係
第4章 性ステロイドホルモンの知識
終章 長寿遺伝子と性ステロイドホルモン
「カロリス」とは ”caloric restriction” で、カロリー制限のこと。栄養不足に注意しながらカロリー摂取を減らすと、原生生物から哺乳類まで多くの種で寿命が大幅に延びる。カロリー制限により、インスリン/IGFシグナル伝達系の活動を抑制することによって長寿遺伝子を活性化し、寿命を延長する。
(最も私は、今のところとくに長生きするつもりはないし、ましてやそのための厳しいカロリー制限はごめんこうむる)
著者は、女性にホルモン補充療法を勧めている。