hiyamizu's blog

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林丈二「マンホールのふた(日本篇)」を読む

2013年08月14日 | 読書2

林丈二写真・文「マンホールのふた(日本篇)」(1984年3月サイエンティスト社発行)を読んだ。

ただひたすら全国のマンホールの蓋の写真を集めた本だ。「ええ、何、それだけ」と思う方もいるだろうが、マンホール愛好家にとっては伝説の本だ。
かくゆう私めもその一人で、ブログネタに困ったときに3回ほどお世話になった。


東京篇は、上水道、下水道、電信電話、電力、ガスなど事業者別で、全国篇は各県主要都市別にマンホールの蓋の写真が並ぶ。
著者の関心は、古い物にあるようで、東京府、東京市の時代の蓋を探し歩いている。大正から昭和にかけて、東京市郊外、といっても目黒、渋谷、江戸川など、の水道が町営や会社経営であった時代のマンホールまで探し出して写真を撮っている。何度も挙動不審として職務質問を受けたのも納得だ。

蓋さがしの6種の道具
カメラ(すぐ結果が確認できるデジカメはまだなかったので著者の苦労がしのばれる)、地図、歩いた道は二度と歩かないように地図に線を引く黄色いサインペン、貴重な蓋の位置を印す赤いサインペン、寸法を測る巻尺、蓋の上の小石やゴミをとる小さな刷毛。

付録篇
「マンホール蓋の歴史」
映画「ローマの休日」でオードリ・ヘップバーンがこわごわと手をいれる「真実の口」もローマ時代の貴族の館の庭にあった雨水排除のためのマンホールの蓋を壁にはめ込んだものだそうだ。

「古いカタログ」
現在でも蓋は数千円で売っている。私もコレクションしたいのだが、とても許可は下りそうもない。

「マンホール周辺の出来事」
昭和30年のある日、道端のマンホールから百円札が一枚顔を出していた。拾ってみると、「助けてくれ。この中に二人いる」と書いてあった。助け出された二人によると、検査でマンホールに入っていたのに、仲間が勘違いして重さ20貫(75kg)の蓋を閉めてしまったという。

「マンホールの登場する小説」「マンホールの登場する映画」「マンガに登場するマンホールと蓋」「用語解説」「図面」「参考文献」



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

私自身の評価としては、★★★★(四つ星)なのだが、マニアック過ぎて、決して「お勧め」ではないので、「二つ星」とした。

時代・地域が広範で、膨大な写真には圧倒される。戯れに、気まぐれに写真を撮るだけの私とはレベルが違いすぎる。脱帽だ。

良く見かける東京都下水道局の蓋の中心部は、下という字と、水のパターン化になっていると教えられた。まだまだ勉強不足と諭された。ちなみに、横浜市には下水道局はない。環境創造局というのだ。これってどうなの?

冒頭に、美空ひばりのヒット曲「東京キッド」の「もぐりたくなりゃ マンホール」歌詞がある。今こそマンホールは目立たず、ただ人に踏みつけられるだけの存在だが、この歌の昭和25年には歌に歌われるほどの晴れやかな表の存在(?)だったのだ。



林丈二(はやし・じょうじ)
1947年東京都練馬区生まれ。イラストレーター、エッセイスト。
武蔵野美術大学産業デザイン科卒業後、サンリオ勤務。退社後フリー。
調査マニアで、穴開きブロックのパターン調べ、都内各駅切符のパンチ屑収集など、とくにマンホールの蓋研究が話題を呼んだ。路上観察学会の一員。
1984年、本書『マンホールのふた(日本篇)』
1986年『マンホールの蓋(ヨーロッパ篇)』、発起人の一人として路上観察学会創立
その他、『目玉の散歩ノート』、『街を転がる目 玉のように』、『路上探偵事務所』、『イタリア歩けば』、『がらくた道楽』、『猫はどこ?』、『型録・ちょっと昔の生活雑貨』、『西洋アンティーク 絵葉書』など


コメント
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