酒井順子著『泡沫日記』(2013年4月集英社発行)を読んだ。
「私、初めてなんですぅ」と可愛く声をあげた20代をはるかに過ぎて、40代女子にも初めてのことが次々と訪れる。花粉症発症、近親者や友人の死、介護などのから、自分自身の老化など大人の初体験はほろ苦い。多くの本を出している酒井さんだが、初めての日記エッセイだという。
たとえば、老化現象。三十代時代もなんとなく感じた老化の足音ですが、四十代になると、その音ははっきりと耳元で聞こえるように。身体のあちこちに、それまで感じたことのなかった変化を発見して、ショックと言うよりは「へえー、こんな風になるの!」という新鮮な驚きが続きます。
気が付けば最年長だったり、友人の葬儀で初弔辞を読んだり。初スマートフォンに馴染めるだろうかとクラス替え直後のような不安を覚えたり、カブトムシを飼育したり、お祖母さんが101歳で亡くなったりした。
初白髪染めを買うときに懐かしい恥ずかしさを感じたり、初ディナーショー(清水ミチコ)に行ったり、ラオスの里子に会いに行ったり、4歳の姪を初めて預かったり、忙しいことで。
取材などで地方に出かけることも多い酒井さん、鉄女でもあるので、ローカル線での話も多い。
題名は、以下から。
初体験とは、手に入れた途端にパチンと消えてしまう、泡のようなものです。いくらきれいであっても、その泡をずっととっておくことはできないし、本当の「初めて」は、ただ一度だけ。
初出:集英社WEB文芸「レンザブロー」2011年2月~2013年2月
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
「40代で老化? ふふん、まだまだじゃよ」文字通り年寄りの私は余裕をもってわが娘のような酒井さんを愛でる。まあ、今後あっというまに押し寄せる老化の波を楽しんでください。
何気ない日常も含めて25日分の日記を、40代の初体験の視点でまとめてしまう力量はさすが。でも、この類の本(非難ではなく、楽しいが残らないという意味)を読んで、残り少ない人生を過ごして良いのだろうかとも思ってしまう。まあ、残り、とくに何があるわけでもなく、気楽に楽しめれば良いか!
酒井順子の略歴と既読本リスト