hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

浅野素女『フランス父親事情』を読む

2014年11月22日 | 日記

浅野素女著『フランス父親事情』(2007年4月10日築地書館発行)を読んだ。

パリで20年以上暮らす著者は、フランスの父親たちへ取材を重ねて、やはり、子供には母親とは違う父親の存在感が必要だと考え直しつつある最近の傾向を示す。といっても、7年程まえの本だが。

現代フランスの家族事情
・婚姻関係にない親から生まれる子供は、1970年代には7%だったが、今日では約半分だ。
・2006年の時点で、100組の夫婦のうち42組が離婚する。1990年に共同生活を始めたカップルの15%が5年後に別れ、10年後には30%が別れている。
・結婚でも事実婚でもその社会的権利は、死亡時の遺産相続以外、まったく変わらない。
・もともと、女性も個人の正式な姓は、結婚しても変わらなかったのだが、2005年から、生まれた子どもに母親の姓を与えることが可能になった。

フランスの家族事情の変化
・1943年、堕胎を助けたマリーという女性はギロチンで死刑になった。(なんと、約70年前のことだ)
・1970年、(五月革命の影響で)法律上の父権が消滅し、親権になった。
・フランスでは、70年代からのフェミニズム思想、女性の社会進出、避妊手段の発達などで、家庭での父親は影が薄くなり、母親の陰に隠れた。
・80年代に入ると、母親と同じように育児に入れ込む「めんどりパパ」が登場。母親になろうとして、やりすぎる父親も出て来た。
・90年代には母親とは違う父親の重要性が再認識されるようになってきて、親権の法整備などで父親の権利回復作業が進められた。
・21世紀に入り、父親を含めた家庭づくりを目指して、「父親手帳」の交付、父親の出産休暇が2週間に延長され、出生率は2006年には2.0に達した。

家庭での父親のあるべき姿
母と子が渾然一体となった至福の関係は、いずれ終わりを告げなければならない。できればなるべく早い時期に、母親は子どもに、「あなたの存在だけでは私は満たされない」と、明示してやる必要がある。母親の目が自分以外のものに向けられている、母親は自分以外の存在(特に父親)に魅かれている、と感じる時、子どもは失望すると同時に、ある種の心の平安を得る、離れていっていいのだ、と。

母親は、子どものすべての欲求に即座に応えようとする。・・・父親はそれを阻む存在なのだ。・・・
何らかの欠乏の感覚があるから、子どもは泣く。その欠乏の感覚こそが、人間が人間たる所以のもので、欠乏の感覚がある種の緊張をもたらし、ほしいものに手を延ばす動きを生む。・・・その欠乏が満たされた時、幼児は「自分」を意識する。・・・それは・・・自分が生きていると感じる瞬間なのである。

「父親の傾向として顕著なのは、子どもが何か企てて行動に移そうとする時、積極的に後押しすることだ。・・・父親の存在感がある家庭の子どもの方が、一般に、「他人」や「外の人」にたじろがない子どもになるという。

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

全体の主旨には納得でき、個々の例もよく解るのだが、全体の話の流れがスムーズでない。フランスでの父権の喪失から復活という大きな流れはあるのだが、インタビュー内容など、あちこちに話が飛ぶ。

4章の神と精神分析、5章父性をめぐる西洋史は、講義調で、おもろない。


浅野素女
1960年生まれ。上智大学フランス語学科卒業。
フランスの家族制度が激動してきた20余年間をパリで暮らす。二児の母。
ジャーナリスト、エッセイスト。新聞、雑誌、ラジオを通じ、フランス社会の「いま」を日本に伝える


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする