東野圭吾著『使命と魂のリミット』(角川文庫 ひ16-7、2010年2月25日角川書店発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
「医療ミスを公表しなければ病院を破壊する」突然の脅迫状に揺れる帝都大学病院。「隠された医療ミスなどない」と断言する心臓血管外科の権威・西園教授。しかし、研修医・氷室夕紀は、その言葉を鵜呑みにできなかった。西園が執刀した手術で帰らぬ人となった彼女の父は、意図的に死に至らしめられたのではという疑念を抱いていたからだ・・・・・・。あの日、手術室で何があったのか? 今日、何が起こるのか? 大病院を前代未聞の危機が襲う。
初出:「週刊新潮」2004年12月30日~2005年11月24日
単行本:2006年12月新潮社より刊行。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
話の組み立ては良くできているし、相変わらず読みやすい。四つ星に近い三つ星だ。
犯人さえも、人を気遣うように、登場する人物はすべて良い人、純粋人間で、クサイ台詞を平気で語る。良かった良かったの大団円で、読む人をハッピイにさせるが、物足りない気持ちが残る。
なぜ犯人が停電させるのに、あんな複雑な方法を選んだのか、もっと簡単な方法があったのではと思う。
以下、ネタバレ気味のあらすじ。
氷室夕紀は、中学3年のとき大動脈瘤の手術で父・健介を亡くした。父の手術の執刀医は、心臓血管外科の権威西園教授だった。同じ病に苦しむ人たちを助けたいと、同じ帝都大学病院心臓血管外科の西園教授のもとで研修医になった。一方で、夕紀は父の死後の母と西園が恋人関係になっていることから、西園が意図的に医療ミスを起こしたのではとの疑惑を払拭できなかった。
直井穣治は過去に死亡事故につながる問題を起こした大自動車会社社長の島原が帝都大学病院に入院したとの情報を得て、看護師の真瀬望に接近する。
夕紀が発見した脅迫状には、「すべての医療ミスを公表し、謝罪せよ。さもなければ病院を破壊することになる」とあった。
以下、白字
聴取に来た警視庁の七尾は、健介の指導を受けた部下だった。そして、健介が少年グループのバイクを追跡中に少年が事故死したことを知る。
再び脅迫状が届き、予告通りに病院で発煙騒ぎが起こる。多くの患者が転院するなか、過去に死亡事故につながる問題を起こした大自動車会社社長の島原など少数の患者は病院に残った。
島原の大動脈瘤の手術を西園が行うことになり、夕紀も立合いを命ぜられた。しかし、犯人によって停電させられた手術室の中で・・・。
登場人物
氷室夕紀(ひむろ・ゆうき):帝都大学病院の心臓外科医を目指す研修医。「姫」と呼ばれる。
氷室健介:氷室夕紀の父。元警察官。夕紀が中学生の時に胸部大動脈瘤の手術中に死亡。
氷室百合恵:氷室夕紀の母。西園陽平との再婚を考えている。
西園陽平(にしぞの・ようへい):帝都大学病院教授。心臓血管外科の権威。氷室健介の担当医だった。
元宮誠一:帝都大学病院の心臓外科医。西園の弟子。30代後半で独身。
山内肇:氷室夕紀の指導医。中塚芳恵の主治医。40代。
真瀬望(ませ・のぞみ):帝都大学病院心臓血管外科の看護師。21歳。
菅沼庸子:帝都大学病院のベテラン看護師。
笠木:帝都大学病院の病院長。
田村:帝都大学病院の臨床工学技士(CE)。
直井穣治:電子機器メーカーのエンジニア。看護師真瀬望と同棲。
神原春菜:ノンフィクションライター。直井穣治の彼女。事故で重傷となり、渋滞に巻き込まれ死亡。
中塚芳恵:腹部大動脈りゅうと胆管癌で入院。79歳。
森本久美:中塚芳恵の娘。
島原総一郎:大手自動車会社社長。大動脈瘤の手術で帝都大学病院に入院。65歳。
七尾行成:警視庁の刑事。刑事だった氷室健介に指導を受けた。
坂本:警視庁の刑事。七尾の相棒で後輩。
本間和義:警視庁特種班捜査二課統括者。
小坂:七尾が懇意にしている新聞記者。