東野圭吾著『変身』(講談社文庫 ひ17-9、1994年6月15日発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
世界初の脳移植を施され、一命を取り留めた青年、成瀬純一。恋人とのささやかな日常を取り戻した彼に異変が訪れる。凶暴化する性格、変わりゆく才能。変化を止められない純一は、提供者(ドナー)の影響を疑う。画期的な手術に隠された真実とは。他人の脳に支配されたとき、彼女を愛する心も消えてしまうのだろうか。
成瀬純一(24歳)はある不動産屋で少女を助けようとして強盗に撃たれたが、世界初の成人脳片移植手術によって一命をとりとめる。
しかし、大人しかったはずがキレやすくなり、絵を描くのが好きだったのに音楽が好きになるなど変わってしまい、職場でも嫌われる。
やがて入れ替えられた右脳の提供者(ドナー)が、事件後自殺した強盗犯であったと知る。死後も意識は脳の中に残っており、徐々に純一の脳を支配していく。 恋人の恵に魅力を感じないようになり、移植手術した堂元教授の助手橘直子に心惹かれるようになり、やがて・・・。
本書は1993年6月講談社ノベルスとして刊行。
2005年に映画化。2014年にWOWOWでTVドラマ化。
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
脳移植など現実味がないSF調で、移植した脳に支配されるなど、どこかで聞いたような話で、現実味も新鮮味もない。
荒唐無稽の話も、人物や生活がに厚みがあり、深く描かれていれば、心を打つのだが、初期の東野作品には頭だけで作り上げたものも散見される。この作品が典型的。
登場人物
成瀬純一:24歳。産業機器メーカーのサービス工場勤務。職場では、従順な「お利口さん」、恋人の恵にはジュンと呼ばれ、休みの日は絵を描いて過ごす。父も母も他界している。
葉村恵:純一の恋人。画材ショップ「新光堂」の店員。ソバカスがある。
堂元(どうげん):東和大学医学部脳神経外科教授。
橘直子:堂元の助手。化粧気は無いが、美人で、ジェクリーン・ビセット似ている。
若生(わかお):堂元の助手。橘に好意を持っている。
光国(みつくに):心理学教授。堂元の紹介で純一にインタビューしようとする。
葛西三郎:成瀬の同僚。
矢部則夫:成瀬の同僚。ひょうきんな男。
酒井:入社が成瀬より2年早い職場の先輩。喧嘩っ早い。
臼井悠紀夫:成瀬の隣の部屋に住む学生。金持ちの息子。
関谷時雄:成瀬に移植された脳のドナー。享年22。交通事故で死亡。小学校以来喧嘩はしたことがない。
関谷明夫:時雄の父。小さな喫茶店「赤煉瓦」を経営。
京極瞬介:不動産屋を襲い、成瀬を撃った犯人。去年母親が風邪をこじらせて死亡。心臓手術代を払わなかった内縁の夫で不動産屋社長の番場に復讐しようと犯行に及び、屋上から金をばらまいて自殺。
京極亮子:瞬介の双子の妹。駅前などで似顔絵描きをしている。
番場哲夫:「バンバ不動産」の社長。瞬介の母と籍も入れず、瞬介を認知しなかった。
嵯峨典子:不動産屋の事件で純一が助けた少女。
嵯峨道彦:典子の父親。法律事務所を経営。入院費を肩代わりするなど純一の力になろうとする。
倉田謙三:捜査一課の刑事。