hiyamizu's blog

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東野圭吾『ダイイング・アイ』を読む

2017年12月27日 | 読書2

 

 東野圭吾著『ダイイング・アイ』(光文社文庫ひ6-11、2011年1月20日発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

雨村慎介は何者かに襲われ、頭に重傷を負う。犯人の人形職人は、慎介が交通事故で死なせた女性の夫だった。怪我の影響で記憶を失った慎介が事故について調べ始めると、周囲の人間たちは不穏な動きを見せ始める。誰が嘘をつき、誰を陥れようとしているのか。やがて慎介の前に妖しい魅力に満ちた謎の女が現れる。女の正体は、人形職人が甦らせた最愛の妻なのか?

 

 冒頭、グロテスクに、壁と車に挟まれて、肋骨がポキポキ、内臓が圧迫など潰されていく女の一瞬の様子がスローモーションで細かく語られる。

美菜絵の目は、真っ直ぐ前に向けられていた。彼女の身体を押し潰した車を運転している人間の顔に、だった。

許さない、恨み抜いてやる、たとえ肉体が滅びても――。

 グロテスクな記述に東野さんらしくないなと思ったが、これがこのホラーでミステリーの始まりだった。

 

 ダイイングメッセージ(死にゆく者が残すメッセージ)という言葉はあるが、ここでは、死にゆく者の恨みを込めた目ダイイング・アイがタイトルだ。

 

2007年11月光文社刊

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 催眠術と書いてあるが実質ホラーが軸になったミステリーで、ホラー嫌いな私は筋道としては感心しない。

 

 登場人物はすべて良き人とは言えない悪者で、これも東野作品には珍しいのでは。

 東野さんは、シリーズもの以外は、いつも違ったタイプの小説を書く。同じタイプの小説を書いていれば読む方は楽なのに、いつも違った形の小説に挑戦する東野さんには感心する。

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

 

登場人物

雨村慎介(あめむら・しんすけ):「茗荷(みょうが)」のバーテン。襲われて事故の記憶を無くす。29歳。

小野千都子(ちづこ):バー「茗荷」のママ。

 

岸中美菜絵(きしなか・みなえ):自転車で帰宅途中、慎介が起こした事故によって死亡。29歳。

岸中玲二:マネキン制作会社勤務。事故死した美菜絵の夫。事故1年後に慎介を襲った後に、自殺。

 

村上成美:ホステス。慎介と2年前から同棲。彼が襲われ記憶を失った後、失踪。29歳。

 

江島光一(えしま):慎介が前に勤めていたバー「シリウス」オーナー。

岡部義幸:シリウスのバーテンダー。

由佳:シリウスへよく来るホステス。事故時、慎介は由佳を送っていく途中だった。

 

木内春彦:帝都建設社員。慎介の車をよけきれず、女性をはねてしまった。現在は、羽振りのよい生活。

上原ミドリ:帝都建設の社長令嬢で木内と婚約する予定だったが、突然破棄された。

瑠璃子(るりこ):「茗荷」に突然やってきた謎の女。美人で目力が強い。

 

小塚:警視庁西麻布署の刑事

榎木:警視庁西麻布署の若い方の刑事

 

 

以下、ネタバレで白字

バーテンダーの西村慎介は店じまいして戸締りをしている時に襲われ、頭の骨が折れ、大手術を受けた。

同棲している村上成海が介抱し、慎介が働く「茗荷」のママ・小野千都子と以前勤めていた「シリウス」のオーナー・江島光一も見舞いに来る。

犯人、岸中玲二はすぐ分かり、自宅で自殺していたが、彼は慎介が起こした事故で亡くなった岸中美菜絵の夫だった。しかし、慎介は事故の記憶だけが無い事に気が付く。岸中玲二はマネキン職人だった。

 

店に美女が表れ慎介は一目惚れする。同棲していた成海が行方不明となる。

事故当時の担当刑事から聞いて、事故の様子が分かった。女性は慎介の車に接触し、きたもう1台にはねられ死亡したのだった。

ようやく、もう1人の加害者を調べ、帝都建設に勤める木内晴彦だと分る。

 

岸中玲二の隣に住む高校生の男の子が、部屋から1年前に死んだ奥さんが飛び出してきたと言った。

 

慎介は店に来る美女・瑠璃子と良く会うようになったが、呼び出された高層マンションに慎介は監禁されてしまう。なんとかタオル掛けの金具のネジを回すことができて、結局携帯電話を手繰り寄せ、小塚刑事に助けを求めた。

 

慎介は部屋にあったマネキンの顔が瑠璃子だと気づく。岸中玲二は妻・美菜絵とそっくりなマネキンを造ろうとしていたのだ。

 

自宅に帰りネジを回すことで思い出した鏡を取り外したが、中には3千万円はなかった。

 

慎介は木内がよく行くシーガル(カクテルバー)行き、木内と瑠璃子が写っている写真を見せられた。彼女は木内の婚約者上原ミドリで、事故後婚約解消したという。

 

事故時、運転していたのは江島で後部座席に座っていた慎介は3千万と引き換えに身代わりになったのだった。

いずれこのお金で独立しようと成海にだけ話していた。慎介の記憶がない事を知って、成海は金を見付け逃げたのだ。そしてその事をネタに江島から更に金を奪おうとしたが江原に殺され三千万も取られたのだろう。

慎介は江島にすべてを黙ってるかわりに5千万を要求し受け取った。

 

お酒を飲んでいた社長令嬢のミドリが運転する車が女性をはねてしまい、木内が身代わりになったのだ。

しかしミドリは死んでゆく時の美菜絵の目が忘れられず、精神を病んでしまう。被害者の家に行ったミドリは美菜絵似のマネキンを見て、自分が美菜絵となったように思い、やがて実際の顔もマネキンの美菜絵に変えてしまう。そして、岸中が殺しそこなった慎介に復讐しようと思う。

 

帰宅した慎介は後ろから江島に殴られ意識を失い酒を無理矢理飲まされていた。そんな江原の後には瑠璃子の姿があった。「あなた、だったのね。あたしを殺したのは。」

瑠璃子はベランダに行き、「あたしを殺しなさい」「そうして今度こそ忘れないで、あなたがあたしを殺したということを。あながが殺した女の顔を、女の目を」と江島の目をとらえて、せまる。江島は瑠璃子を持ち上げでベランダから下へ落した。ベランダに立ち尽くした江島は警察に捕まり、自分の両目を潰した。

コメント
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