hiyamizu's blog

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外山滋比古『思考の整理学』を読む

2021年11月03日 | 読書2

 

外山滋比古著『ワイド版 思考の整理学』(2017年1月25日筑摩書房発行)を読んだ。

 

筑摩書房の宣伝文句

『思考の整理学』は1983年に刊行、1986年に文庫化した学術エッセイです。
自分の頭で考え、アイディアを軽やかに離陸させ、思考をのびのびと飛行させる方法とは。
広い視野とシャープな論理で知られる著者が明快に提示します。
2008年に東大・京大生協の書籍販売ランキングで1位を獲得して以来たびたび1位を獲得し、
根強い支持を得ている「思考法」入門書です。

 

外山滋比古氏の代表作である本書は累計発行部数253万部を超え、刊行から30年以上経った今も、大学生の必読書として読み継がれているという。

この作品は1983年筑摩書房より「ちくまセミナー1」として刊行され1986年にちくま文庫として刊行されたものを大きな活字にしたワイド版だ。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

さすがのロングセラーも40年近く経過すると時代の移り変わりによるずれが目立つ。例えば、今や知識は先達に聞いたり、百科事典で苦労して調べるものでなく、ネットで簡単に探し出せる時代になっている。自分の頭で考えることが一番大切であることは変わらないが、周辺事情が違い過ぎて、のめり込んで読むことはできない。

 

私はこの本を読んだことがなかったので、かなり古い本だが読んでみた。しかし、本書は2007年に書店員・松本大介さんの「もっと若い時に読んでいれば……」という店頭のポップをきっかけに注目されるようになったというのだが、もはや齢80になろうとする私が今読んでどうなるものでもないだろう。

 

私は、書店に山と積まれたハウツウ本はほとんど読まない。一般論でしかも抽象化されていては説得力がないからだ。この本をそんな類の本と一緒にしてはいけないが、やはり第一次情報でなく、昇華された第二次、第三次情報が並んでいて、汗のにおいがしない。なるべく例を挙げているのだが。

 

 

 

外山滋比古(とやま・しげひこ)

1923年~2020年7月。文学博士、評論家、エッセイスト。東京文理科大学英文科卒業。

『英語青年』編集長を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学などで教鞭を執る。専攻の英文学に始まり、テクスト、レトリック、エディターシップ、思考、日本語論の分野で、独創的な仕事を続けている。

著書に『思考の整理学』『ことわざの論理』『「読み」の整理学』『知的生活習慣』『伝達の整理学』(筑摩書房)など多数。

 

 

 

いくつか抜き出してみる。

人間にはグライダー能力と飛行機能力とはある。受動的に知識を得るのが前者、自分でものごとを発明、発見するのが後者である。(p13)

 

どうして、「一晩寝て」からいい考えが浮かぶのか、よくわからない。…しばらくそっとしておく。すると、考えが凝固する。それには夜寝ている時間がいいのであろう。(p38)

 

ニュース、具体的で即物的な思考や知識は、第一次情報であり、一次情報をふまえて高度の抽象を行ったメタ情報が第二次情報だ(p75)。…整理、抽象化を高めることによって、高度な思考となる。…(一方で、)誤解の多いコミュニケーションを救うには、抽象のハシゴをおりて、二次的、三次的情報を一次的情報に還元するのが有効である。
(字数が限られるネットにおいて、強引な決めつけや、レッテル張りにより不必要に激しい争いになりがちなのは、低次元な二次的情報のやりとりに終始するからではないか? かといって、一次情報に還元すれば有効な論争になるのだろうか?)

 

考えをまとめようとして、なかなか思うように行かなくて、いらいらすることがある。…

そういうときには、

「とにかく書いてごらんなさい」

という助言をすることにしている。(p135)

 

気心が知れていて、しかも、なるべく縁のうすいことをしている人が集まって、現実離れした話をすると、触媒作用による発見が期待できる。

 

現代のように、第二次的現実が第一次的現実を圧倒しているような時代においては、あえて第一次的現実に着目する必要がそれだけ大きいように思われる。人々の考えることに汗のにおいがない。したがって活力に欠ける。(p195)

 

 

 

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