吉田修一著『パレード』(幻冬舎文庫、よ7-1、2004年4月10日幻冬舎発行)を読む。
裏表紙にはこうある。
都内の2LDKに暮らす男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い? 私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分"を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第1回山本周五郎賞受賞作。 解説・川上広美
目次(以下5章、各章は以下の人物の視点で語られる)
1.杉本良介:21歳、H大学経済学部3年。下北沢のメキシコ料理店でバイト中。七万円で買った愛車に「桃子」と名付けている。
いかにも気のいい男だが、実は尊敬する先輩・梅崎の彼女・貴和子を狙っている。
2.大垣内琴美:23歳、無職。美人。短大時代から付き合っていた若手人気俳優「丸山友彦」からの誘いを待って引きこもり、TVを見て枝毛を切る毎日。
ふとした瞬間に、私ってもしかしたら何に対しても興味がないのかもしれないと思う。浮かんでくるのは興味を持ったらきっと周りが羨ましがるだろうなってことばかりだった。
3.相馬未来:24歳、イラストレーター兼雑貨屋店長。現在、人生を見つめて深酒中。
怪しげなシーンを切り取ったビデオを隠し持っている。
4.小窪サトル:18歳、自称「夜のお仕事」に勤務。現在、無駄な若さを切り売り中。
5.伊原直輝:28歳、インディペンデントの映画配給会社で猛烈に働く。他人から頼まれると、つい引き受けてしまうが、実は。
年齢こそ10歳しか違わないが、経歴も仕事もバラバラな4人が、狭い2LDKに一緒に暮らすようになった経緯が徐々に明らかになる。同時に5人の人物の退屈で怠惰な生活がくっきりと描かれる。
この作品は2002年2月幻冬舎より刊行。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
シェアハウス生活が目新しかった時代、生きる目的が見つからず怠惰な生活を過ごすことに何か新しさを感じる時代だった頃の小説だったのではと思う。
屈託ないように見せて、実際は他人との距離をある程度以上には近づかないようにする。特に若者同士の関係がそうであるように見える現代を象徴するような小説なのでは?
とくに、シェアハウスでは決して同居者に対して踏み込みすぎてはいけないし、決して自分の全てを明らかにしてもいけない。各人がそれぞれなんらかの闇を抱えていて、他の人はそこに踏み込んでもいけないし、気づいていてもそう思わせてもいけない。そんな関係性をはっきりと描き出したこの小説が、そして著者が高く評価されたのだろう。
吉田修一の略歴と既読本リスト (7月26日に公開)