東野圭吾著『殺人の門』(角川文庫 ひ16-4、2006年6月25日)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
「倉持修を殺そう」と思ったのはいつからだろう。悪魔の如きあの男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。そして数多くの人間が不幸になった。あいつだけは生かしておいてはならない。でも、私には殺すことができないのだ。殺人者になるために、私に欠けているものはいったい何なのだろうか?人が人を殺すという行為は如何なることか。直木賞作家が描く、「憎悪」と「殺意」の一大叙事詩。
解説・北上次郎
刑事が言った。(580ページ)
「・・・あなたの場合、何らかの引き金が必要なのかもしれませんね。それがないかぎり、殺人者となり門をくぐることはできないというわけです。・・・」
この作品は2003年8月角川書店より単行本として刊行。
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
悪人の倉持修に興味が湧く。徹底した悪人なのか、中途半端なのか? 和幸を助けたいのか、貶めたいのか。両方だと思える。
佐倉洋平が言う。(599ページ)
「・・・皮肉なことに、彼が心から信じられるのは、捨て石として抜擢した相手だけなんだ。だからそんなあなたは彼にとって友人だったのです。・・・ただし、それには若干の条件が付きますが」
「捨て石として役に立たないほどには幸せにしない、ということです」
各種詐欺商法がこれでもかというほど出てくる。基本的には同じパターンなので、どうして騙されるのか理解に苦しむが、オレオレ詐欺が隆盛し続けているということは騙される人が多くいるということなのだろう。読んでいて、途中から、相変わらず騙され続ける和幸の馬鹿さ加減にうんざりした。いくらなんでも学習しろよと思う。
「和幸」という名前で友人を思い出した。彼は「‘かずゆき’の‘かず’は不和の‘わ’で、‘ゆき’は不幸の‘こう’と書きます」自己紹介していた。
登場人物
田島和幸:主人公
田島健介:和幸の父。歯科医。
田島峰子:和幸の母
トミエ:トミさん。祖母の介護を主とする家政婦
ハルさん:家政婦
志摩子:父の愛人。バーのホステス。
倉持修:和幸の小学校以来の友人。実家は豆腐屋。
木原雅輝:和幸の中学の同級生
江尻陽子:和幸が中学の時に公営プールのアルバイトで知り合った。
津村香苗:和幸と付き合う。
小杉:和幸と会社の独身寮で同室。ツッパリ上がり。彼女はナオコ。
藤田:会社の3歳上の同僚。いじわる。
山下:金セールスの東西商事の幹部
黒沢:東西商事のセールスレディ。変装名人。
川本房江:東西商事の客。他に宮内公恵、牧場喜久夫。
上原由希子:牧場喜久夫を心配する女性。美人。
関口美晴:上原由希子の高校の同級生
寺岡理栄子:和幸の家具店の客。本名は村岡公子。
佐倉洋平:経営コンサルタント。ガンさん。