窪美澄著『夜に星を放つ』(2022年5月30日文藝春秋発行)を読んだ。
かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。
コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。
第167回直木賞受賞作。224ページと薄い単行本に5編の短編。
「真夜中のアボカド」
コロナ自粛期間、アボカドの種から芽が出るのを期待している32歳の綾は、婚活アプリで出会った恋人・麻生との関係がはっきりしない。30歳を前に早世した一卵性双生児の妹・弓は30歳の時、脳内出血で突然死んでしまった。彼氏だった村瀬は弓をなかなか忘れられない。綾は村瀬君に最後に言った。「あれが双子座の星だよ。あの星は弓ちゃんと私」
「銀紙色のアンタレス」
16歳の真は海で泳ぎたいと夏休みにばあちゃんの住む海辺の町に向かう。幼馴染の朝日も来るという。ばあちゃんの家には近所の相川さんの娘さん・たえさんが赤ん坊の歩(あゆむ)を連れて来ていた。花火をしながら朝日が言い出した。「あのね……」
「真珠星スピカ」
女子中学生・佐倉みちるは、亡くなった母親の幽霊に教えられながら家事をしている。みちるは学校で瀧澤さんたちからいじめを受け、担任の船瀬先生が単純に介入するのでよけいにひどくなって、三輪先生のいる保健室登校していう。
「湿りの海」
1年前、37歳の猿渡の、妻・希里子は3歳の娘・希穂を連れて恋人とアリゾナに行ってしまった。隣にシングルマザーの船場さんが3歳の沙帆を連れて引っ越してきた。
「星の随(まにま)に」
父の再婚・渚さんと心通わぬまま暮らし始めて2年になる小学4年の想は、塾の生き帰りの電車から3か月に1度しか会えない母さんのマンションが見える。……想は父に言う。「…僕のまわりには好きな人しかいないよ」
私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)
こんないい話、紹介文を詳しく書くのもどうかと思うし、感想をくどくど書くものいかん!
ちょっとオールドファッションだが、読んでいるときは切なく悲しいが、読み終わると心が清らかになったように感じる小説たち。窪美澄さんに「ありがとう」とだけ言っておこう。