海堂尊著『新装版 アリアドネの弾丸』(宝島社文庫Cか-1-21、2016年7月20日宝島社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
東城大学医学部付属病院に導入された新型MRI、コロンブスエッグ。その中で技術者が死因不明の怪死を遂げた。さらに数日後、今度はMRIの中で射殺された元刑事局長の死体が発見される。警察は、現場で拳銃を握って倒れていた高階病院長を犯人と疑うが……。エーアイセンター長に任命されてしまった医師の田口と、厚生労働省の役人・白鳥は、高階の無実を証明すべく奔走する!
「田口・白鳥シリーズ」の第5作。従来の解剖を主体とする法医学側と、新技術のAiセンターを押す医療側が戦い、論戦する。その中で発生する殺人事件と鮮やかな捜査。
田口は万人が驚くAiセンター長に就任させられる。しかし、法医学者と、警察はAiセンターを潰そうと画策し、運営会議で論戦、駆け引きが続く。
友野の死のあと、院長高階が殺人の疑いで拘束される。白鳥は警察が強制捜査を3日遅らせ、その間に高階の無実の証明に努力する。
巻末に海堂ワールドの「全登場人物表」があり、総勢593人の名前・所属・備考のリストがついている。
本作品は2010年9月宝島社社から単行本として刊行し、2012年6月上下巻で文庫化したものを一冊にまとめた。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
ミステリーとしてはまあまあ。白鳥のキャラクターが冴えるが、相棒たる田口はただボーとしているだけ。全体にAi装置、MRIなどの説明が長く、うんざり。
海堂さんの主張するように、人の死亡した原因を確かめることは大切だし、限られた人数しか実施できない解剖よりAiセンタを設置すれば医学の進歩もさらに進むだろう。だからと言って、小説のテーマにその主張をばっちり入れ込むのはどうかと思う。東大教授とやりあったという(ウィキペディア)恨みを小説で晴らしているように見える。
海堂尊(かいどう たける)
1961年千葉県生まれ。千葉大学医学部卒業、同大学院医学博士号取得。
外科医、病理専門医を経て、現在は放射線医学総合研究所・放射線医学病院研究協力員。
2009年より独立行政法人・放射線医学総合研究所・重粒子医科学センター・Ai 情報研究推進室室長。剣道3段。
2006年『チーム・バチスタの栄光』で、「このミステリーがすごい!」大賞受賞。
その他、『ナイチンゲールの沈黙』『ジェネラル・ルージュの伝説』『イノセント・ゲリラの祝祭』『アリアドネの弾丸』『ケルベロスの肖像』『極北ラプソディ』『トリセツ・カラダ』『死因不明社会』『ジーン・ワルツ』
登場人物
東城大学医学部付属病院
田口公平:神経内科学教室講師、不定愁訴外来主任、リスクマネジメント委員会委員長。「行灯」
島津吾郎:放射線科准教授。田口の学生時代の親友で雀友、同期。
神田宏樹:放射線科技師長
沼田泰三:心療内科学教室准教授、エシックス・コミティ代表
笹井浩之:法医学教室教授
高階権太:東城大学医学部付属病院病院長。
藤原真琴:不定愁訴外来専任看護師。美味しいコーヒーを入れてくれる。
兵藤勉:神経内科学教室助手兼医局長。
Aiセンター運営連絡会議メンバー
彦根新吾:房総救命救急センター診断科・病理医。田口や島津の2年後輩の麻雀仲間。
桧山シオン:ジュネーブ大学放射線ユニット特任准教授。画像診断の名手。
東堂文昭:マサチューセッツ医科大学上席教授。話にでるだけで、この本には登場しない。
南雲忠義:元極北市監察医務院院長
北山錠一郎:元警視庁刑事局局長
オブザーバー
白鳥圭輔:厚生労働省の技官、「火喰い鳥」、公平の師でもある。
宇佐美壮一:警察庁初動遊撃室警視。方言がきつい。斜視。締め技の達人。
桜宮市警ほか
加納達也:警察庁刑事局企画課電子網監視室長、「電子狗」
友野優一:MRI担当業者のメンテマン。ショスタコーヴィチの愛好者。
玉村誠:桜宮警察署捜査一課。
斑鳩芳正:桜宮市警広報室長
南雲杏子:南雲忠義の娘
メモ
日本人の年間死者約100万人のうち、85万人は病院で死に、うち2万人に警察がかかわる。解剖の97%は体表からの推量で死因が決められる。
Ai(死後画像診断=オートプシー・イメージング)設置に、批判・監査を拒否する司法は反対する。(本当なの?)