hiyamizu's blog

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池田弥三郎「万葉集-美しき“やまとうた”の世界」を読む

2009年04月22日 | 読書2

池田弥三郎著「ビジュアル版日本の古典に親しむ3 万葉集-美しき“やまとうた”の世界」2006年1月、世界文化社発行を読んだ。

日本最古の歌集である万葉集の4500首を超える歌から、108首を選び、歌にちなんだ風景写真と、わかりやすい現代文と解説を載せている。
ゆかりの地にロケして撮った何千枚もの写真の中から、歌に合わせた絵作りをしたという本で、一面の写真の上に文字を載せた万葉写真集ともいえる。



額田王の「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」
天武天皇「紫の 匂へる妹を 憎くあらば 人妻ゆえに わら恋ひめやも」
これらの歌は、神事のあとの乱酔乱踊で、天武が武骨な舞を舞って袖を振ったのを、才女だが40歳過ぎの額田王がからかいをかけ、天武が即座にしっぺ返しをしたのだという。

私の好きな歌をいくつか。

柿本人麻呂
「東(ひむがし)の 野にかぎろひの 立つ見えて かへりみすれば 月かたぶきぬ」
「近江の湖(うみ) 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしぬに 古昔(いにしへ)思ほゆ」

志貴皇子
「岩激(いはばし)る 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に なりにけるかも」

作者不詳
「幸福(さきはひ)の いかなる人か 黒髪の 白くなるまで 妹が声を聞く」

大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)
「恋ひ恋ひて 逢える時だに 愛(うつく)しき 言(こと)つくしてよ 長くと思(も)はば」

紀女郎(きのおとめ)
「今は吾(わ)は 侘(わ)びぞしにける 生きの緒に 思ひし君を 放任(ゆる)さく思えば」 (今となってわたしはもう、悲観していることだ。絶えず思い続けて来たあの人だったのに、その人を、自由に振るまわせていると思うというと)

大伴家持
「隠(こも)りのみ をればいぶせみ 慰むと 出で立ち聞けば 来鳴く寒蝉(ひぐらし)」(家の中にじっとひきこもっていたので、憂鬱な気持ちになって、心が慰むかとそとに出て行った。ふと聞きとめたのは、近くに来て鳴き始めた、ひぐらしの声だった)
「春の野に 霞たなびき うらがなし この夕光(ゆうかげ)に 鶯鳴くも」
「わが宿の いささ群竹(むらたけ) 吹く風の 音のかそけき この夕(ゆうべ)かも」
「うらうらに 照れる春日に 雲雀あがり 心かなしも 独りし思へば」


池田彌三郎(1914年-1982年)は、東京都生まれの国文学者、随筆家。折口信夫に師事し、その没後は「折口信夫全集」の編集に心血を注いだ。慶應義塾大学教授を務める一方で、国語審議会の委員を4期8年間務めた。国文学者。1980年「池田彌三郎著作集」で芸術選奨文部大臣賞受賞。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

万葉集をめぐる歌人たちの人間関係の図があり、ゆかりの地・関連事件などの解説もあって、万葉集の主要部分、全体像を理解することができる。ゆかりの地の写真も思いを募らせる。
万葉集を4期に分け、各年代別に満遍なく秀歌を選んでいる。万葉集全体を知るためには良い本だ。しかし、好きな歌人の歌を味わう、あるいはお気に入りの歌を探すためには、全体数が108首だけで、その中で作者不詳や、東歌なども多く、十分な数がない。


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