池井戸潤著『ようこそ、わが家へ』(小学館文庫い39-2、2013年7月10日小学館発行)を読んだ。
裏表紙にこうある。
真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから、窮地に追い込まれていく。直木賞作家が“身近に潜む恐怖"を描く文庫オリジナル長編。(解説・村上貴史)
倉田家は警察に被害届を出したが、真剣な捜査は期待できない一方、単なる嫌がらせのレベルと超えて異常にヒートアップする。そこで、自分たちで犯人を突き止めようと行動する。
一方で太一の勤める会社では営業部長が横柄でいかにも不正のにおいがする行動をとり続ける。部下の経理担当の摂子の助けを得て、証拠を集め、優柔不断の太一も決心して社長への直訴するも信頼が得られず跳ね返される。
家庭では高額な出費を惜しまず監視カメラや、盗聴器発見器を購入して、犯人の手がかりをつかみ、さらなる行動にでる。
本書は「文芸ポスト」2005年秋号~2007年冬号掲載作品を加筆修正し文庫オリジナルとして刊行。
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
平凡な家庭に次々とエスカレートして遅いかから嫌がらせ。どこにでもありそうか事から、徐々に耐えられない犯罪に。単なる嫌がらせのレベルを超えてきている理由は、実は・・・。
会社での営業部長の不正をめぐる、暴こうとする側と言い逃れようとする側に戦いも、私には経理上の理屈はわからないながら、面白い。
池井戸潤(いけいど・じゅん)
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。
1988年三菱銀行に入行。1995年退職。
1998年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞受賞
2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞受賞
2011年『下町ロケット』で直木賞受賞
他に、半沢直樹シリーズの『オレたちバブル入行組』・『オレたち花のバブル組』・『ロスジェネの逆襲』、『空飛ぶタイヤ』
登場人物
倉田家
倉田太一(くらた・たいち):主人公。今年52歳。温和で臆病。青葉銀行から去年、中堅企業のナカノ電子部品に出向し、総務部長。
倉田珪子(けいこ):太一の妻。地域のボランティア活動に参加。レザークラフト教室。
倉田健太(けんた):太一と珪子の長男。私立大学2年生。率先して犯人探しをする。
倉田七菜(なな):太一と珪子の長女。高校3年生。
ナカノ電子部品
持川徹:創業二代目の社長
西沢摂子:経理担当。30代後半、シングルマザー。仕事ができる。
真瀬博樹:営業部長。横柄な態度で雄弁。55歳。
平井:営業部課長。40代。
江口浩規(ひろき):配送課。
青葉銀行
村井浩一:ナカノ電子部品の融資担当
八木通春:人事部。倉田と同期。
都築警察
枚方:刑事。相棒は尾村。