hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

森浩美『家族の見える場所』を読む

2013年12月16日 | 読書2

森浩美著『家族の見える場所』(2013年10月双葉社発行)を読んだ。

家族の日常に起きるドラマチックストーリー。最後に必ず一条の光が射し込んでくる、40万部を誇る家族小説短編シリーズの第7弾。

最後のお便り
入社30年、TVからラジオへと流れて来たベテランアナウンサー寺田武は、地味な番組だが「こころの焚火」を4年7ヶ月担当してきた。最後の放送の開始前、入院中の母が危篤だと電話が入る。武は子どもの頃から飽き性で、母には「お前は物事を全うしたことがない」とよく叱られた。
痩せて節くれだった指に触れる。まだ温もりがある。きっと魂はまだ近くにいるのだ。窓の外に目を向けると、何かの鉄塔の先端に光が点滅していた。まるでオンエアーの赤いランプが点いているようだ。「母さん、いいかい…」私はベッドに上体を載せると、母の耳元に口を近づけた。「それでは、最後の・・・」

閉園近し
突然、急性骨髄性白血病になった男は、一時帰宅して妻と娘とディズニーランドへ行く。

夫婦すごろく
理沙と義母は二人で香港に旅行することになった。夫の母は、自分のことをお義母さんでなく、千恵さんと呼ばせる。その理由は・・・。

かわいい娘
娘のことをいつもブスだ、ブサイクと言っているオヤジが・・・。

イキヌクキセキ
東日本大震災で父母を亡くした葵を子供のいない兄夫婦が引き取る。腫れものに触るように接してきた葵に、妹多香子も子供の頃よく歌を歌っていたと話すと、葵も歌が好きだという。そして、夢は・・・。

笑えよな
一人息子の裕平は明日から東京の大学で一人暮らしを始める。心配で東京の下宿を一緒に見に来た母は帰り道、おもわず泣いてしまう。裕平は携帯を取り出し・・・。

柱の傷は
そろそろ建て替え時期が来ている自宅。息子夫婦との同居の話が持ち上がり・・・。父は、一人で見積書を持ってやって来た嫁の美里に、この家の思い出を語る。

後出しジャンケン
母を事故で亡くした姉妹は父がカタールに滞在せざるを得ず、伯父夫婦に預けられ、苛められる。6歳違いの妹は結婚で別居する前の晩、小言は言っても肝心なことは言わない姉に、けじめをつける。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

あまりにも見事で手練れの泣かせに減点で三つ星だが、しみじみと楽しむ余裕のある方には四つ星だ。

それにしても、さすが、放送作家、作詞家だ。人生の機敏を巧みにつかみ、見事な抑揚をつけて、読む人を最後の泣かせに追い詰める。おじいさんもウルウルだ。



森浩美の略歴と既読本リスト


コメント
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