一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

26年ぶりの日本シリーズ(中編)

2016-10-24 21:27:06 | 男性棋戦
いよいよプロの決勝戦である。対局者は佐藤天彦名人と豊島将之七段。
私がJT将棋日本シリーズを観戦するのは26年ぶり2度目である。1度目は1990年12月9日、新潟県民会館で行われた第11回決勝戦で、対局者は谷川浩司竜王と中原誠名人戦だった。今では考えられないが、この将棋を見るためにわざわざ出かけたのだ。当時の私はアグレッシヴだった。
ちなみにこの将棋は88手までで谷川竜王の勝ち。双方居玉(1手も動かなかった)の珍局だった。

場内が暗くなった。対局者に集中してもらおう、の意だろうが、私はメモが取れなくなってしまった。
大きな拍手に迎えられて、両者が登場した。もちろん羽織袴である。午前中に将棋フォーカスをチラッと見た時、講師の佐藤名人は、名人らしからぬ服装をしていたが、本局はもちろん正装である。が、羽織は赤系で、貴族らしい色あいだ。
豊島七段はオーソドックスな色。羽織対決は名人に軍配か。
女性司会者による両者の紹介。
「佐藤名人は…昨年は王座戦、棋王戦と挑戦しましたが、惜しくも敗れました。しかし今年、初参加のA級順位戦で8勝1敗の成績を上げ、羽生名人に挑戦。4勝1敗で名人位を奪取しました」
「豊島七段は…序盤、中盤、終盤、スキのない将棋です」
NHK杯で佐藤紳哉七段が語った豊島評は、そのまま定着した感がある。
両者が所定の位置に座り、駒を並べる。持ち時間は10分。ほかに考慮時間が5分設けられ、使い切ったら1手30秒である。解説は木村一基八段、聞き手は鈴木環那女流二段、記譜読み上げは安食総子女流初段。16時59分、対局が開始された。
将棋は角換わり相腰掛銀になった。両者研究どおりだからか、ポンポン進む。
棋士の対局姿を鑑賞するのはいいものだが、この位置からでは少し遠い。フラッシュを焚かなければ撮影も可、とのことだがやはり遠すぎて、単なる「記録」にしかならない。
鈴木女流二段「角換わりの将棋は、木村先生も王位戦で指されていましたね」
木村八段「イヤなことを思い出させますね…」
というやりとりがおもしろい。
将棋はその王位戦第6局と似た局面になった。
と、豊島七段が△6五歩と開戦した。
▲6五同歩にはたんに△同桂。今は△7五歩や△9五歩はいれないらしい。とはいえ本局も実戦例があり、それは▲6六銀△6四歩と進んでいる。が、佐藤名人はノータイムで▲6五同銀と取った。多少駒損になるが、これで主導権を握れるなら話は簡単だ。
△同銀に▲6三歩が狙いの一手か。△7二金に▲6四桂。日本シリーズには封じ手があり、それを私たちが当てることになっている。しかし両者の指し手が速く、木村八段はそのタイミングが掴めない。将棋が終わっちゃったらどうしましょう、みたいなことを言っている。
佐藤名人▲6一角。
鈴木女流二段「これは…中盤越えちゃってますか」
木村八段「越えてますね」
角換わりの将棋はこれだからおそろしい。
豊島七段が△4四銀と上がったところで、木村八段が封じ手を宣言した。が、さすがに局面が難しく、ここは名人が少考した。
名人が封じ手を記入して、両者が退席する。しばし場内が明るくなった。

ここはいろいろな手が考えられるところで、まずは木村八段と鈴木女流二段が客席に聞く。いくつか候補手が出て、それに木村八段の候補手も追加すると、

▲5二角成
▲4五歩
▲7二角成
▲4五桂

の4つぐらいになった。
私の読みは▲5二角成である。以下△3一玉▲4五歩△3三銀▲5三馬で王手金取りだが、△4二角と合わされてどうか。
実はこの時、私は△8一飛を桂と間違えていた。これが微妙な読み違いを生む。
(つづく)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする