第8期叡王戦第4局の再指し直し局である。2局連続千日手はもちろん珍しいが、タイトル戦では、昨年の第93期棋聖戦第1局・藤井聡太棋聖VS永瀬拓矢王座で起こった。
その将棋は結局永瀬王座が勝ったのだが、まさに「粘り倒した」という雰囲気だった。
これら2例とも、藤井叡王が絡んでいるのが興味深い。
ちなみに千日手後の対局といえば、2012年に行われた第60期王座戦第4局を思い出す。渡辺明王座に羽生善治二冠が挑んだシリーズで、深夜に千日手成立。そこから指し直しとなったのだが、私はネット観戦を続けたため寝るに寝られず、翌朝はたいへんな寝不足になったのを憶えている。
さて本局。ちょっと不利だった将棋を千日手に持ち込めて、藤井叡王に不満なし。反対に菅井竜也八段は、疲労が残ったのではなかろうか。
再び先手番になった菅井八段は、やっぱり三間飛車に振った。そしてお決まりの相穴熊になった。もう、とことんまでやってくれ、という感じである。
お互い四枚穴熊になり、どこから戦いになるのか分からなかったが、菅井八段は中飛車に振り直し、中央の歩を突いた。これには様々な応手があるが、藤井叡王はAIの予想手にない手を指した。飛車で取ったのである。
これは飛車交換ののち飛車を先着できるから先手よし、が菅井八段の読みだった。
だから実際そう指したのだが、そこで藤井叡王が中央の歩を突きだしたのが名手だった。
これに▲5八歩は気合が悪すぎるうえ、狙いの▲5二歩がなくなるので、負けても打てない。
そこで菅井八段は予定通り歩を垂らしたのだが、藤井叡王は歩を成って好調だ。
菅井八段も近い将来銀得になるのだが、双方の角を見ると、菅井八段の角は孤立して捌くのが難しいのに対し、藤井叡王の角は守りに付いている。ここで銀損してもそれほど痛くないのだ。となれば、5七にと金が残っている分、藤井叡王が有利という理屈だ。
実際、以降は藤井叡王ペースとなった。
劣勢とみた菅井八段は、1筋に手をつける。これにAIの予想手は、角で取る手だった。
いくら端を穏便に収めたいからって、角で取る手はないだろう。…と怪訝に思っていたら、藤井叡王が角で取ったので、ひっくり返った。
これは、AIだ。藤井叡王はAIだ。AIを相手にして、人間が勝てるわけない。ここで菅井八段の負けが決まったのである。
将棋は藤井叡王の勝勢となり、最後はAIの提示より早く、菅井玉を詰め上げてしまった。
菅井八段は投了したが、そのまま手順を尽くせば、歩以外余らない綺麗な詰みとなる。これもいつものことで、藤井将棋は投了図がいつも美しいのだ。
菅井八段の敗着は、どんどん遡って、中央の歩を突いたことだろうか。これを飛車で取られることを軽視した。
菅井八段に大きな期待が集まった叡王戦五番勝負だが、終わってみれば藤井叡王の3勝1敗。星の上では、藤井叡王が余裕を持って防衛した。
しかし実際は大変だった。菅井八段は毎回いいところまで行ったが、勝ち切れなかった。欲求不満が残るシリーズだったと思う。この悔しさは、またのタイトル戦で晴らしていただくしかない。
藤井叡王は相穴熊の指し方を実践して、また一回り強くなったように思えた。
もはや藤井竜王にタイトル戦で負けるイメージがまったくわかないのだが、これは棋士全員の見解ではなかろうか。まったく、大変な棋士が現れたものだ。
その将棋は結局永瀬王座が勝ったのだが、まさに「粘り倒した」という雰囲気だった。
これら2例とも、藤井叡王が絡んでいるのが興味深い。
ちなみに千日手後の対局といえば、2012年に行われた第60期王座戦第4局を思い出す。渡辺明王座に羽生善治二冠が挑んだシリーズで、深夜に千日手成立。そこから指し直しとなったのだが、私はネット観戦を続けたため寝るに寝られず、翌朝はたいへんな寝不足になったのを憶えている。
さて本局。ちょっと不利だった将棋を千日手に持ち込めて、藤井叡王に不満なし。反対に菅井竜也八段は、疲労が残ったのではなかろうか。
再び先手番になった菅井八段は、やっぱり三間飛車に振った。そしてお決まりの相穴熊になった。もう、とことんまでやってくれ、という感じである。
お互い四枚穴熊になり、どこから戦いになるのか分からなかったが、菅井八段は中飛車に振り直し、中央の歩を突いた。これには様々な応手があるが、藤井叡王はAIの予想手にない手を指した。飛車で取ったのである。
これは飛車交換ののち飛車を先着できるから先手よし、が菅井八段の読みだった。
だから実際そう指したのだが、そこで藤井叡王が中央の歩を突きだしたのが名手だった。
これに▲5八歩は気合が悪すぎるうえ、狙いの▲5二歩がなくなるので、負けても打てない。
そこで菅井八段は予定通り歩を垂らしたのだが、藤井叡王は歩を成って好調だ。
菅井八段も近い将来銀得になるのだが、双方の角を見ると、菅井八段の角は孤立して捌くのが難しいのに対し、藤井叡王の角は守りに付いている。ここで銀損してもそれほど痛くないのだ。となれば、5七にと金が残っている分、藤井叡王が有利という理屈だ。
実際、以降は藤井叡王ペースとなった。
劣勢とみた菅井八段は、1筋に手をつける。これにAIの予想手は、角で取る手だった。
いくら端を穏便に収めたいからって、角で取る手はないだろう。…と怪訝に思っていたら、藤井叡王が角で取ったので、ひっくり返った。
これは、AIだ。藤井叡王はAIだ。AIを相手にして、人間が勝てるわけない。ここで菅井八段の負けが決まったのである。
将棋は藤井叡王の勝勢となり、最後はAIの提示より早く、菅井玉を詰め上げてしまった。
菅井八段は投了したが、そのまま手順を尽くせば、歩以外余らない綺麗な詰みとなる。これもいつものことで、藤井将棋は投了図がいつも美しいのだ。
菅井八段の敗着は、どんどん遡って、中央の歩を突いたことだろうか。これを飛車で取られることを軽視した。
菅井八段に大きな期待が集まった叡王戦五番勝負だが、終わってみれば藤井叡王の3勝1敗。星の上では、藤井叡王が余裕を持って防衛した。
しかし実際は大変だった。菅井八段は毎回いいところまで行ったが、勝ち切れなかった。欲求不満が残るシリーズだったと思う。この悔しさは、またのタイトル戦で晴らしていただくしかない。
藤井叡王は相穴熊の指し方を実践して、また一回り強くなったように思えた。
もはや藤井竜王にタイトル戦で負けるイメージがまったくわかないのだが、これは棋士全員の見解ではなかろうか。まったく、大変な棋士が現れたものだ。