名人戦第3局の2日目である。ここまで、矢倉対雁木で形勢は互角。ただ先手の玉は角に睨まれている。しかも右桂はすぐに使えないし、右銀も立ち遅れている。アマ同士で指したら、後手がかなりの確率で勝つと思う。
というところで渡辺明名人の封じ手は、飛車先の歩を突く手だった。こうして角交換をしてしまえば、後手の角の脅威がなくなる。
だから藤井聡太竜王も角交換を拒否した。
さればと渡辺名人も2筋に歩を垂らす。このあたり、虚々実々の応酬だ。
藤井竜王が5筋に飛車を回ると、渡辺名人は再度角交換を挑んだ。
問題はここで、藤井竜王は角を切って(銀を取る)、飛車を成りこんだ。これが何ともいえない手だった。
以前も記したが、藤井竜王は大駒を捨てるのが得意だ。「切る」ではなく「捨てる」である。
それは飛車と歩を交換したり、飛車を見捨てたりする手だ。そしてそれで、キッチリ1手勝ちを収めてきた。
しかし今回の角切りは似て非なるもので、藤井竜王らしさを感じない。「行っちゃえー!」という感じで、私たちがよくやる、成算がないのに勢いで大駒を切ってしまったさまによく似ているのだ。
ここで渡辺名人は底歩を打ち、竜の応手を聞いた。藤井竜王は▲4八の銀を取る。駒は取られたことで働いたことになる。あの中途半端だった銀が盤上から消えて、立派に働いたのだ。
むかし、W氏が中倉彰子女流二段に指導対局を受けたとき、「▲9八金」というどうにもならない遊び駒を作ったことがあった。
しかしその金を彰子女流二段が取ってくれ、タコ金が立派に働いたと、W氏が苦笑いしたことを思い出した。
閑話休題。さらに渡辺名人は桂を跳ねる。これが竜取りと同時に、角を捨てて2三の金を取る手になっている。
しかも実戦もそのように進み、先手が優勢になった。
これがまた不思議なところで、藤井竜王があの銀を取れば、以下の数手は容易に想像がつく。藤井竜王なら0.1秒で読める。そ考えておしてそれは先手優勢である。先手はほぼ角損の攻めだが、その前に角銀交換の駒得をしているので、実際は銀損くらいの攻めである。それで相手の金を取り竜を作れたなら、銀損などモノの数ではない。
それなのになぜ藤井竜王は、この順に飛び込んだのだろう。そんな切り合いに行かずとも、いくらでも軌道修正ができたのではないか?
藤井竜王はここで反撃に出たが、1手すいたところで、渡辺名人は最後の長考に入る。まだこんなにも時間が残っていたのだ。いつもは考えても考えても勝ちがなかったのが、今回は勝ちがありそうである。これは考え甲斐があっただろう。
タイム1時間33分、渡辺名人は、敵玉頭にタダ捨ての角を放った。これが決め手で、数手後の飛車打ちで、藤井竜王が投了した。渡辺名人、実にうれしい1勝となった。
勝った渡辺名人は「とりあえずほっとした」と述べた。対藤井竜王戦の久し振りの勝利に際し、これは本音だったと思う。
また藤井竜王は「どういう指し方がいいか、考えても分からなかった」と述べた。こちらは藤井竜王らしからぬ答えに思えたが、対局過多でさすがに疲れがたまっているのではなかろうか。
さて、渡辺名人が1勝を返し、通常の七番勝負ならこれで面白くなるところだが、藤井竜王の実績と両者の対戦成績を考えれば、まだまだ藤井竜王がアドバンテージを握っている。
第4局も渡辺名人は必勝あるのみだ。第4局は21日・22日。もうすぐだ。
というところで渡辺明名人の封じ手は、飛車先の歩を突く手だった。こうして角交換をしてしまえば、後手の角の脅威がなくなる。
だから藤井聡太竜王も角交換を拒否した。
さればと渡辺名人も2筋に歩を垂らす。このあたり、虚々実々の応酬だ。
藤井竜王が5筋に飛車を回ると、渡辺名人は再度角交換を挑んだ。
問題はここで、藤井竜王は角を切って(銀を取る)、飛車を成りこんだ。これが何ともいえない手だった。
以前も記したが、藤井竜王は大駒を捨てるのが得意だ。「切る」ではなく「捨てる」である。
それは飛車と歩を交換したり、飛車を見捨てたりする手だ。そしてそれで、キッチリ1手勝ちを収めてきた。
しかし今回の角切りは似て非なるもので、藤井竜王らしさを感じない。「行っちゃえー!」という感じで、私たちがよくやる、成算がないのに勢いで大駒を切ってしまったさまによく似ているのだ。
ここで渡辺名人は底歩を打ち、竜の応手を聞いた。藤井竜王は▲4八の銀を取る。駒は取られたことで働いたことになる。あの中途半端だった銀が盤上から消えて、立派に働いたのだ。
むかし、W氏が中倉彰子女流二段に指導対局を受けたとき、「▲9八金」というどうにもならない遊び駒を作ったことがあった。
しかしその金を彰子女流二段が取ってくれ、タコ金が立派に働いたと、W氏が苦笑いしたことを思い出した。
閑話休題。さらに渡辺名人は桂を跳ねる。これが竜取りと同時に、角を捨てて2三の金を取る手になっている。
しかも実戦もそのように進み、先手が優勢になった。
これがまた不思議なところで、藤井竜王があの銀を取れば、以下の数手は容易に想像がつく。藤井竜王なら0.1秒で読める。そ考えておしてそれは先手優勢である。先手はほぼ角損の攻めだが、その前に角銀交換の駒得をしているので、実際は銀損くらいの攻めである。それで相手の金を取り竜を作れたなら、銀損などモノの数ではない。
それなのになぜ藤井竜王は、この順に飛び込んだのだろう。そんな切り合いに行かずとも、いくらでも軌道修正ができたのではないか?
藤井竜王はここで反撃に出たが、1手すいたところで、渡辺名人は最後の長考に入る。まだこんなにも時間が残っていたのだ。いつもは考えても考えても勝ちがなかったのが、今回は勝ちがありそうである。これは考え甲斐があっただろう。
タイム1時間33分、渡辺名人は、敵玉頭にタダ捨ての角を放った。これが決め手で、数手後の飛車打ちで、藤井竜王が投了した。渡辺名人、実にうれしい1勝となった。
勝った渡辺名人は「とりあえずほっとした」と述べた。対藤井竜王戦の久し振りの勝利に際し、これは本音だったと思う。
また藤井竜王は「どういう指し方がいいか、考えても分からなかった」と述べた。こちらは藤井竜王らしからぬ答えに思えたが、対局過多でさすがに疲れがたまっているのではなかろうか。
さて、渡辺名人が1勝を返し、通常の七番勝負ならこれで面白くなるところだが、藤井竜王の実績と両者の対戦成績を考えれば、まだまだ藤井竜王がアドバンテージを握っている。
第4局も渡辺名人は必勝あるのみだ。第4局は21日・22日。もうすぐだ。