ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
H.オーグラー著『アドラー心理学入門』シリーズの第19回目です。
今回は、「人生問題の誤った解決」としての問題児、犯罪、神経症、男性的抗議、売春、同性愛に関するアドラーの見解、サディズム、マゾヒズム、フェティシズムのうちの犯罪について、です。
著者のH.オーグラーは、犯罪に関して21ページを割いていますが、このブログでは、できるだけ簡素化してそのポイントを3つにしてお伝えします。
まずは、アドラーの犯罪者に関する見解はいかがか?
著者は、アドラーが一般に信じられていた他の心理学者の見解を拒否し、彼なりに新しい考えに基づいた新しい方法を研究したことを指摘しています。
他の心理学者の見解とは、
人間は、器官の欠陥ゆえに、環境の諸条件のゆえに、遺伝のゆえに犯罪者になる
という見解です。
アドラーは、器官の欠陥、環境の諸条件、遺伝の重要性などがライフ・スタイルに好ましくない影響を与えることを認めながらも、犯罪者には、次のような共通性があること研究したのです。
それは、
犯罪者はみな、共同体感覚が欠けている
ということで、だからこそ、
1.共同体感覚を前提とするその他の人生問題もまた、誤って解決されるだろうことが予期される
2.他人に対する犯罪者の関心は、ふつうごく小範囲の人びとに―主として彼らの仲間―に制限されることも事実
さらに著者は、犯罪者は、実際には臆病で気が弱く、真っ直ぐな道をたどる勇気がなくて、その代わりに曲がりくねった道、目標への暗い小路を選ぶことを指摘しています。
第2に、どんな種類の人びとが犯罪者になる傾向があるか?
著者は、犯罪者のパーソナリティを観察すると、ライフ・スタイルは本来、多様性があってもしかるべきなのに、
彼らには、共同体感覚が児童初期に目覚めさせられなかった
という共通した特徴があることを述べ、犯罪者の人生をその児童初期へ遡って跡づけると、劣等コンプレックスの諸源泉 ― 器官劣等性、甘やかし、無視 ― のどれか1つを発見する、としています。
犯罪者のライフ・スタイルは、彼らの努力目標を見ると最もはっきりします。
アドラーの研究では、次のように結論づけられています。
犯罪者の努力目標は、個人的優越性の欲求である。
そのような欲求を持つ犯罪者は、
征服者になること、それも、自分が臆病だから弱者の征服者になることを自らの目標として設定する
と説くのです。
ここで著者は、アドラーが力説している言葉を残してもいます。
勇気と共同体感覚とは、いつも密接につながっている。
第3に、犯罪は、予防できるか?
論評だけしていても仕方がありません。肝心なことは、「犯罪が予防できるかどうか?」です。
アドラーは、この問いに YES と答えます。
アドラーは、
正しい養育と適切な教育とがあれば、人びとが犯罪者になることを防ぎうる
という絶対の確信を持っています。
再犯に関しても、犯罪者のライフ・スタイルを変える正しい方法が用いられるならば防止できるとしています。
さすが勇気と希望を与えるアドラー心理学だと思いませんか?
次回は、神経症をテーマにします。
ここで、全体の約2/3です。長い間のご精読に感謝申し上げます。
以後も変わらずよろしくお願いします。
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