おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
とても知的興奮を伴って読めた優れた経営論です。
『開放型組織をつくるマネジメント』(一般社団法人 日本能率協会KAIKAプロジェクト室、実業之日本社、1,800円+税)
著者の一人である一般社団法人 日本能率協会KAIKAプロジェクト室の山崎賢司さんから贈呈を受けて一気に読みました。
「開花」を語源とし、創発や相互作用を生み出す経営、開放型組織の基軸となる考え方の「KAIKA」は、新しく多様な価値観、働き方、組織形態を経営の中に取り入れていく経営思想です。
その思想により、新技術や新ビジネスモデル、新ネットワークを構築し、「関わる価値」と市場を生み出し、循環状態を起こしていくことが、この経営の目指す方向性だとしています。
私の学びとなったのは、次の点です。
1.「欲しいものがない」時代は終わり、「プロセスに関わる楽しみ」「一緒につくる喜び」「社会のためになることをしたい」などという欲求と、それに呼応した動きが増えていること
2.「創発」とは、「部分の性質の単純な総和にとどまらない特性が、全体として表れること」を差すが、それは人の知識やノウハウ、場といった自律的な要素を「つなげる」ことにより、個々あるいは組織単体の能力や発想を超える成果を生み出す、ある種の化学反応が起きる状態。これは、ボトムアップの発想に立つ「シナジェティックス」という自己組織の考え方と重なる。
3.課題解決アプローチには、(1)ありたい姿と現状のギャップを問題として解決していく「ギャップ・アプローチ」と、(2)その場で手に入るものを寄せ集め、、それらから何がつくれるか試行錯誤しながら、最終的に新しいものをつくる「プリコラージュ・アプローチ」がある。
なお、人類学者のクロード=レヴィ・ストロースが使った「プリコラージュ」は、「寄せ集めて自らつくる」「物を自分で修繕する」ことを指す。
これらは、ほんの一例です。
以上の流れをもとに能率重視からKAIKA経営へと「ものさし」を持ち替えるには、次の3つが必要です。
・右肩上がり思考からの脱却
・自前主義・クローズドのシステムから創発性主眼のオープンなシステムへ
・ギャップ・アプローチからプリコラージュ・アプローチへ。そしてあるべき姿の追求から良い循環を生み出す発想へ
これら、結果として緩やかなつながりで解決していくという一連の考えを取り入れた経営をKAIKA経営と呼んでいます。
アドラー心理学と比較すると、理論としての全体論、価値観としての共同体感覚と関連づけられそうで、その点でも示唆に富んだ良書です。
贈呈してくだった山崎賢司さんと大いに語り合いたい思いが募りました。
<お目休めコーナー> 4月の花(14)
(クリックしてね)