付け焼き刃の覚え書き

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「ドイツの火砲~制圧兵器の徹底研究」 広田厚司

2008-04-26 | 戦記・戦史・軍事
 砲兵が活躍した最後の大戦争である第二次大戦時に、ドイツの火砲がいかに発達していったかをさまざまな砲の種類と共に紹介していった1冊。

 歩兵が近接戦闘に突入する前に敵火力を制圧するために使用する近接支援用の迫撃砲。歩兵と共に移動して直接火力支援を行う歩兵砲。これを戦車の車体に載せると自走砲。山岳地帯での支援用に分解容易な小型軽量砲として設計された山砲。対戦車砲に装甲列車に列車砲、対空砲に対空要塞とレーダー網。
 しかしソ連の火砲に比べてドイツの火砲は終始射程が短く、また戦況の悪化により開発した兵器も大量生産に至らなかった。主力は最後まで前大戦時の改良版であったという……。

 ここまで徹底的に追求して浮かび上がるトホホな実態。
 山砲はいろいろ試してみたけれど、いちばん評判が良かったのは第一次大戦前から輸出していたクルップ製の山砲だったとか。
 通常火砲より信頼性は劣るけれど発射装置が安価で製造も簡単なことから普及したロケット砲。でもいちばんのきっかけはそれまでに東部戦線でソ連軍からさんざんカチューシャ・ロケット砲の洗礼を受けていたため。
 強力だけれど、一箇所突破されると残りのほとんどが無用の長物となる沿岸砲や要塞砲、航空機の発達で時代遅れになっていた鈍重で金食い虫の列車砲。
 弾薬も足りなくてソ連軍の捕獲砲が火砲不足を補っていたということですし、装甲列車も先陣を切って配備し活用していたのはソ連軍と聞くとますますトホホ。

 こうしてみると、ドイツは決して兵器の先進国では無かったのですね。
 それでも頑張ったのは対空砲群。宮崎駿がマンガに描いた対空要塞フラック・トゥルムも大活躍(当社比)。何千門という対空砲や機関砲、そして夜間に接近する敵を捉えるサーチライト中隊、警戒レーダー、大型測距儀、聴音機を統括する指揮所。結局、複雑のシステムを動かすのが好きなだけだったんでないかいという気も。
 もちろん、ちらっとではあるけれど、風力砲や電磁砲にも言及。言及してあるだけだけれども。

【砲兵】【開発の無駄】【多様性】【生産性】
コメント
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