付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「どこかにいってしまったものたち」 クラフト・エヴィング商會

2013-08-04 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 物から人まで、どこにも存在しないものをいかにもそれっぽく存在させてみせてしまう創作集団「クラフト・エヴィング商會」。そのクラフト・エヴィング商會が自らを創り出してしまったのがこの本。
 そもそもクラフト・エヴィング商会の「3代目」という“著者”が、重力を計る機械やら光を吸い取るランタンやら、店が明治から昭和初期まで商ってきた商品を、その解説書や宣伝チラシで紹介するというコンセプトの1冊(実物はすべて“どこかにいってしまった”ので)。
 なんというか、ドラえもんの不思議道具のようなアイテムの数々を、いかにもそれっぽい取扱説明書や広告で実在していたように見せてしまうクラフト・エヴィング商會の匠の技は健在。大笑いさせるでもなく、ときどきぱらぱら目を通しながらニヤニヤするための本とでもいいましょうか、「つまらん」と評価する人はいるだろうし、「洒落てるね」と褒める人もいるだろうし、そういう本です。

【どこかにいってしまったものたち】【クラフト・エヴィング商會】【時間幻燈機】【アストロ燈】【硝子蝙蝠】【記憶粉】【水密桃調査猿】【人工虹製造猿】【流星シロップソーダ】【月光光線銃】【空中寝台】【迷走思考修復器】【万物結晶器】
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「顔のない魔術師」 ベン・アーロノヴィッチ

2013-08-04 | ミステリー・推理小説
「あなたが火の玉で倒したもっとも大きなものは?」
「タイガーだろうな」

 絶滅危惧種の方ではなく、パンツァーカンプフ=ヴァーゲン・ゼクス・アオスフ・Eの方だとナイティンゲール警部。

 他人を害する邪悪な目的で魔法を使う者が「ブラックマジシャン」だと警部は言うのだが、新米刑事のピーター・グラントとしてはその分類には承服しかねるのだ。
 だって、それは黒人の魔術師、つまり自分を意味することになるではないか……。

 次々に変死していくジャズ・ミュージシャンの謎と、股間を噛み切られていく連続殺人を、たった2人のロンドン警視庁特殊犯罪課(しかも課長は負傷中)が殺人課などと協力して追い詰めていくミステリの2作目。前作のラストで負傷した女性警官のレスリーは、命を取り留めたものの顔面が破壊されたままで、本人はもちろん読者もやりきれないままです。簡単に傷を治せる魔法はないよ……という事実がつきつけられます。

 さて、イギリスの軍の組織は頻繁に改組されるので、せいぜい第2次大戦当時のことでもはっきりわからないことが多いという話を読んだばかりだったのだけれど、こちらもいきなり「警察組織は数年で名称が変わるので、みんな正式名称よりも通称を好む」という話が出てきました。個人的にタイムリー。
 そして、イギリスの話であるせいなのか、やたら食事のシーンはあるけれど、湿気っていながら固くなっているサンドイッチとか、むやみに不味そうです。せいぜいグレービーソースのかかったソーセージくらいですが、これも読んでいて美味しそうには思えません。
 ヒロイン……というわけではないのだけれど、館付きメイドで黒髪吸血鬼のモリーも飯が不味くて、こっそり外食することが多かったというエピソードにもショボン。なんというか、いかにも英国舞台にした小説を読んでいるという気になります。

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