付け焼き刃の覚え書き

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「朝食の歴史」 アンドリュー・ドルビー

2016-02-28 | 食・料理
「ディナーに人を招くのは、そのひとを招かねばならないからだ。(中略)しかしひとを朝食に招くのは、そのひとに会いたいからだ」
 下院議員マコーリーが1850年頃に、ハリエット・ビーチャー・ストウにそう語った。

 「朝食」とは何か?の定義から始まり、ホメロスの『オデュッセイア』から聖書、さまざまな文学作品や紀行文・日記・絵画等で言及される食事を通して、その歴史を考えていく一方、アメリカ、フィリピン、日本、ベトナム、中国と世界各地の朝食の変遷を追う1冊。
 誰しも自分の知るものがスタンダードだと考えがち。あのアイザック・アシモフですら、核物理学入門で「私たちが朝食にジャガイモを食べるくらい」当たり前にと語っていますが、そんな当たり前はたいていの現代日本人は(おそらく)知らないわけです。
 根拠はないけれど、石器時代、狩猟・採取文化では朝から食料を集め始め、食べられるものが集まったときに食べる食事がいちばん大がかりな食事であり、おそらくは唯一の食事であろうから朝食とか夕食の区別がなくても当たり前なんでしょう。そして「ありあわせ」「夕げの残り」が朝食となる時代や階層や地域が生まれていき、19世紀頃から美術界では「朝食」がテーマの1つとなっていくわけですが、そんな過程を本書では追っていきます。
 いつから朝食が当たり前になったのか、夜明け前から働いて一仕事終えての食事から起きて最初にすることに替わったのはいつ頃か、英国でのパンとバターの朝食と昼の正餐がひとつになって豪華な朝食として成立するのは、気候と朝食の関係は。
 朝に何か食べるのか食べないのか、軽く食べた方が身体に良いのか悪いのか、それらも時代によって移り変わりがあるわけですが……。

「イギリス人は朝食に何を食べたのか、何を飲んだかを述べるのは難しくない。やはり紅茶なのだ」

 巻末に世界の朝食19のレシピ付。

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