付け焼き刃の覚え書き

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「トリックスターズ」 久住四季

2007-11-08 | ミステリー・推理小説
「考えるのをやめるな。思考を放棄するな。そうやって拳を振り上げる気力があるなら、もうちょっとマシな方向に回せ。やれることは全部やれ。そうしてから悲しめ」
 5番目の魔術師、佐杏冴奈の言葉。

 ほぼ現代と同じ世界。ただ1つ違うことは、魔法が現実に存在しているということ。とはいえ、魔法が非科学的なものには違いなく、また科学技術ほど使い勝手は良くない。科学技術では何百人もを乗せた飛行機を飛ばせるが、魔術では人間1人でさえ空を飛ばせることは困難。また魔術を行使することのできる魔術師は世界で6人しか残っていない。それゆえ、科学文明の恩恵を受けている日本での魔法研究、魔学の認知度は低い。
 だから医学部を蹴って魔学部へと進学した天乃原周は変わり者の部類に入るかもしれない。そんな周に入学オリエンテーション初日、満員電車の中で道を尋ねてきた女性こそ、新たに赴任してきた魔学部の客員教授、佐杏冴奈であった……。

 予告殺人をテーマにした作品なんだけれど、「推理小説を模った現代の魔術師の物語」と帯のあおり文句にあるけれど、まさしくその通り。確かに謎はあって、探偵によって謎は解かれ解決するんだけれど、「推理」と「魔術」のどちらに重点があるかというと後者。というか、根本のトリックはシンプルなんだけれど、「魔術に何ができて何ができないか」など読者ははっきり判らないわけで、(そもそも犯人が拉致した被害者を殺害までどうしていたのかとか)「それはできるけど、これはできないのね?」というボーダーラインで翻弄されてしまうのですし、結局は世界で6人しかいない魔術師の価値観みたいなところに行き着くのですね。
 (最初の予告そのものに問題があるんじゃないのかとか)まだまだ荒削りの作品ですが、一気に読ませる勢いはありました。いずれ「推理」と「魔術」のどちらかに収まるのか、両方とも極めてしまうのか興味深くはあります。

 手鞠坂くんはけっこう女性扱いが荒いよね?

【トリックスターズ】【久住四季】【予告殺人】【魔術師】

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