付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「移民の宴」 高野秀行

2016-02-14 | 食・料理
「これから日本が外国の人たちにとって、もっともっと住みやすい国になることを祈って止まない。なぜなら、そういう国は明るく気さくであるはずで、日本人にとっても住みやすいはずだからだ」
 日本という国に余裕がなくなり、排外感情が広まりつつある風潮は悲しく残念なことだけれど、この確信はいまだ揺らがない。

 日本に居住している外国人はおよそ200万人。
 鶴見の町に溶け込んでいる沖縄系ブラジル人たちや最後の白系ロシア人、神楽坂のフランス人など、さまざまな人々を訪ね、彼らがどのように暮らし、どんなものを食べて生活しているか、食事を共にしていく中で彼らの生き方と日本そのものを対比していく本格ルポ。盲目のスーダン人、『わが盲想』のモハメド・オマル・アブディンも登場してます。
 苦労して頑張っている人もいれば楽天的に行き当たりばったりの人もいて、国籍や宗教に関係なく人それぞれではあるけれど、予想外に紙幅を費やしているのは取材期間中に発生した東日本大震災のこと。

「この中でうちが流された人は?」
「はーい!」

 フィリピン人女性たち全員が元気よく手を挙げた。
 みんな流されたけれど、楽しい思い出は残っているという。
 すべてを失っても明るく前向きなフィリピン人女性たちの姿とか、なぜかことごとく広島に疎開していく北欧系大使館の謎とか、ネパール人がなぜカレーライスの炊き出しができたのかなど、非常時だからこそ普段の生き方、宗教観やライフスタイルや母国との関係が浮き彫りになります。

「日本人は神様いないでしょ? だから壁にぶつかったときにダメになっちゃう。自殺しちゃう。僕たち神様いるから、壁にぶつかってもなんとかなるって思えるんだよ」
 ハラル食材店の「社長」の指摘。
 みんな神を信じている、助け合って生きている、仕事より子供を大事にしている。だから人生楽しいのではないか。

 取材で出会った人々の後日譚に言及したあとがきも最初の書籍版と文庫版の二段重ね。

【移民の宴】【日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活】【高野秀行】【山田博之】【森清】【グレゴリ青山】【講談社文庫】【東日本大震災】【ベーカリーアンデルセン】【クックパッド】【中華学校】【ハラル】【ヒンドゥー教】【モスク】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「グリモワール×リバース2」 藍藤遊

2016-02-13 | VRMMO・ゲーム世界
「俺は、そうだな。浪漫が好きなんだ。こういう、風情や風流、王道、鉄板……浪漫。それが、俺の原点で、到達点って訳よ」
 シュテンはそうリュディウスに語る。
 ゲームの主人公パーティーと出会い、ささやかな手助けをして、彼らを見送る。それってファン冥利じゃないか。

 帝国書院を半崩壊させてヒイラギを救出したシュテンだが、別に帝国と敵対したいわけではないし、魔族に味方するつもりもない。すべては成り行きだ。ただし、モノクルハゲ、てめえはぶっ殺す……と。
 そしてシュテンは次の珠片を探して教国へ向かうのだが、彼らの前に魔王軍のナンバー3、魔王軍唯一の人間にして導師ヴェローチェが立ちはだかる。彼女とてシュテンを殺すつもりはない。自分の部下として引き入れたいのだ。ただし、クレイン、光の勇者は叩きつぶす!
 しかし、ゲームのファンであったシュテンが主人公パーティーの壊滅をおとなしく見ているはずもなかった……。

 モノクルハゲことデジレが単なるバカな敵役ではなく、主人公のライバル、対の存在、ボケとツッコミとして存在感を増していきます。勇者クレインと合わせて主人公3人態勢のような展開になってます。

【グリモワール× リバース#02】【転生鬼神浪漫譚】【藍藤遊】【エナミカツミ】【カドカワBOOKS】【破天荒な妖鬼の爽快・浪漫譚】【モンスター転生】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「蜘蛛ですが、なにか?」 馬場翁

2016-02-12 | 異世界転生
「くそう、魔法少女マジカル蜘蛛子ちゃんを名乗る日はまだまだ遠そうだわ」

 勇者と魔王の戦いが幾度も繰り返される世界があったが、その世界で放たれた大魔法が炸裂したのは、日本のある高校の教室だった。
 古文の授業中だった教室にいた古文教師と25人の生徒は即死して異世界で転生。しかし、彼女が転生したのは蜘蛛、エルロー大迷宮に巣くう大蜘蛛の1匹としてだった。
 彼女の意識が目覚めた次の瞬間、同じく生まれた何十何百という兄弟姉妹たちとの過酷な生存競争、共食いが始まっていた……。

 強いモンスターばかりの深い迷宮の中で、1匹の小さな蜘蛛のバケモノとして転生してしまった元女子高生のサバイバル。蜘蛛のサバイバルと並行して、(時間軸はわからないけれど)王侯貴族の子弟に転生したクラスメイトの様子が語られ、そのギャップに涙した読者は「生きろ、蜘蛛子ちゃん!!!」と叫びたくなるわけです。
 あっさりチートで頭角を現すような転生無双ものではなく、かわいい美少女が群れて主人公を好き好きとなることもなく、どう頑張っても蜘蛛な女の子が常に命の危機にさらされながらも少しずつ進化していくモンスターの迷宮譚。次にどうなるか、ドキドキしながら読んでます。
 カドカワBOOKSの特徴で,シリーズものでも1巻とかナンバー振らないんですよね。簡単に打ち切る気満々。無双できるようになるまで、続いてて欲しいもんです。

【蜘蛛ですが、なにか?】【馬場翁】【輝竜司】【カドカワBOOKS】【モンスター転生】【カエル】【ムカデ】【ヘビ】【ドラゴン】【ハチ】【サル】【エルフ】【生まれたての子鹿】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「遙か凍土のカナン(6)」 芝村裕吏

2016-02-11 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「人間を動かすなら、まずはその想像力を刺激して操るべきだな。良造。そうすれば、ほんの少しの暴力で、効率よく操ることができる」
 後に「鉄の人」をペンネームにする革命家、親切なヨシフおじさんの助言。

 気がついたら4年が経っていた。妻はもういない。
 だが周囲は、ユダヤ人も、コサックも、共産主義者たちも、良造に後妻をめとれと執拗に迫る。彼の気持ちが分からないではないが、諸勢力が呉越同舟で寄せ集まった街は不安定で、彼が後妻を決めなければどこかの勢力が候補者を続々と送り込んでくることが目に見えていたのだ。
 だから友人たちは言う、どの勢力にも属していない娘ジブリールを娶ってしまえ。いや、そもそもまだ抱いていないのか?と。

 未だ生まれざる国「シベリア共和国」の、“五人と一匹の國”から紡がれる新たなる歴史物語は急転直下。歴史が大きく動き出し,血もどっさり流れました。そして『マージナル・オペレーション』とのリンクもますます鮮明となりますが、願わくばこの物語が大団円を迎えますように。

【遙か凍土のカナン(6)】【建國篇】【さらば、愛しき姫君】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【星海社】【凍土の英雄譚】【ヨシフ・スターリン】【プーチンスク】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「デート・ア・ライブ11~鳶一デビル」 橘公司

2016-02-10 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「いやでもほら、折紙だし……」
 鳶一折紙の好感度を上げるのに大人のホテルに連れ込もうとしたり怪しい裏通りの薬屋に誘うのは、他人には信じがたい選択だが、士道にとっては安全パイの選択肢だった。

 狂ってしまった鳶一を救うため、士道は狂三に借りを作って過去へと跳んだ。
 それはまさに彼女の放った一撃によって、幼い彼女と両親が吹き飛ぶ瞬間だった……。

 時間の修復機能が働くのか、惨劇を無かったことにしようとするところから始まる時間改変のトライアルアンドエラー。そして惨劇が起こらない世界の鳶一折紙は、どんな少女に成長したのか……という、鳶一編の完結編。

【デート・ア・ライブ11】【鳶一デビル】【橘公司】【つなこ】【富士見ファンタジア文庫】【時間遡行】【タイムパラドックス】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「屍者たちの帝国」 編:大森望

2016-02-09 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「地球派人類の揺りかごだが、そこに永遠に留まっているわけにはいかないのだ」
 補聴器の老人の言葉。

 伊藤計劃がプロローグを書き、基本的なプロットだけ残して夭逝した後、それを引き継いで書き上げたのが円城塔の『屍者の帝国』。そして、同じ書き出しを前提にしながら、生きた死体が社会の一部となっている世界の物語を、好きに書いて欲しいということで依頼して集めたのがこのアンソロジー。
 屍者が太陽系開拓の最前線で働かされている世界の話もあれば、南北戦争後に日本へと送り出された屍者の兵士たちの運命を描いた作品もあり、なにがどう転がるか想像のつかない短編が8篇と対談を収録。

【屍者たちの帝国】【伊藤計劃】【北原尚彦】【坂永雄一】【高野史緒】【津原泰水】【仁木稔】【藤井太洋】【宮部みゆき】【山田正紀】【大森望】【円城塔】【河出書房新社】【スチームパンク】【2001年宇宙の旅】【スタートレック】【アンクル・トムの小屋】【白痴】【カラマーゾフの妹】【キャプテン・フューチャー】【アルジャーノンに花束を】【ドウエル教授の首】【ブレードランナー】【マトリックス】【まだらの紐】【空き家の冒険】【ジャングルブック】【ドクター・モローの島】【舞姫】【クマのプーさん】【円城塔】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「亡命ロシア料理」 ワイリ&ゲニス

2016-02-08 | 食・料理
「人間と故郷と結び付ける糸には、じつに様々なものがなり得る。偉大な文化、強大な国民、誉れ高い歴史。しかし、故郷から伸びているいちばん丈夫な糸は、魂につながっている。いや、つまり、胃につながっているということだ」
 故郷ってのは、つまり食卓の記憶なのだ。

 タイトルからしてロシア料理のレシピかと思いきや、読んでみれば2人組のロシア人文芸評論家による、食を中心にしたエッセー。亡命ロシア人がアメリカには真のロシア料理がないと嘆きながら、アメリカの文化を揶揄し、ロシアの制度を茶化し、フランスを皮肉っぽく笑い、そして最後にはロシアの料理に思いを馳せ、忘れた頃にレシピをちらりと載せていたりするのです。
 大学生の長男が一気読みして面白い、語り合いたいからと手渡してくれました。

【亡命ロシア料理】【ピョートル・ワイリ】【アレクサンドル・ゲニス】【未知谷】【壺】【メンチカツ】【ユダヤのペニシリン】【カエル】【ペリメニ】【バレエとピクルス】【ボルシチ】【チーズ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「デスマーチからはじまる異世界狂想曲 (6) 」 愛七ひろ

2016-02-07 | VRMMO・ゲーム世界
「クジラは美味い」
 美味いものに罪はない。
 いやー、魔族よ。やればできるじゃないか!

 船旅を愉しみつつ、闘技大会で湧く公都オーユゴックに到着したサトゥーたちは、露店に花火、舞踏会と観光を満喫するが、権力を笠に着るアブナイ貴族に出くわして辟易。何かあったときのためにとお茶会を通じて貴族社会に顔を売って支持を得ていくサトゥーだったが、魔王復活を画策する一味の残党に気がつくのだが……。

 仕事場で仮眠していたはずが異世界に迷い込んでいた、ゲームプログラマーの異世界紀行。富士見からカドカワに転籍させられたので、きちんと続きが出るかドキドキしながら読み進めました。
 毎回書籍版は、大筋は変わらないもののウェブ版とは少し違った構成やストーリーになっていますが、今回はリーングランデ嬢を軸に再構成。ウェブでは蛇足と省略されていた、セーラ嬢と仲良く慰問のくだりももうちょい詳しく書かれています。

【デスマーチからはじまる異世界狂想曲(6)】【愛七ひろ】【shri】【富士見書房】【ほのぼの異世界観光記】【小説家になろう】【ウェブ小説】【武術大会】【舞踏会】【花火】【YESロリータ、NOタッチの精神】【勇者】【鯨肉】【テンプラ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「男なら一国一城の主を目指さなきゃね4」 三度笠

2016-02-06 | 異世界転生
 迷宮都市バルドゥックへ旅立ったアルは途中、2人連れの冒険者の危機を救い、その1人が転生者であることを知る。人族のラルファとその養父であるドワーフのゼノムだ。転生の秘密を共有する3人は、そのまま迷宮都市でパーティを結成することにしたのだが、そこで転生者を罠にかけようという陰謀に気づく……。

 迷宮都市に辿り着き、探索を開始するあたりまでで、最終章に登場するのは意外にもあのキャラ。メインヒロインはどこへいった!?(落っこちてます)
 グループ再編で富士見書房からカドカワBOOKS刊行になった途端の4巻完結。やるせない。書店の売上げランキングは決して高くはなかったけれど、面白くて良い本で、他の巻を重ねているシリーズと比較しても遜色なかったのに。
 主人公にかわいげがなかったのがいけなかったのか、はたまた周囲の女性が主人公にことごとく惚れないのが良くなかったのか。亜神の謎とか主人公の欠落する記憶とか所在不明の転生者の生き残りとか、いろいろ回収できなかったネタは少なくありませんが、とりあえずウェブ版が削除されたりダイジェストされていないのが救い。書き続けていれば、また次の機会もあるかもしれません。

【男なら一国一城の主を目指さなきゃね4】【三度笠】【椎名優】【カドカワBOOKS】【サラリーマン建国記】【輪廻転生】【小説家になろう】【ウェブ小説】【転生者】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「星をひとつ貰っちゃったので、なんとかやってみる3」 茂木鈴

2016-02-05 | ファーストコンタクト
 株式会社惑星チャンス移住局が本格的に始動した。
 最初はネットでの口コミに半信半疑だった人々も関心を持ち始め、ママゾンで発売された見学券付パンフレットは瞬殺。
 ところが騒ぎが大きくなり、惑星チャンスの存在に信憑性が増すようになるにつれ、これを自陣営に組み込もうと日本の政府や諸外国が動き出し、国連を巻きこんだ政治抗争へと拡大していった……。

 マスコミの無能さと下劣さ、大国の欲深さと強引さもはやテンプレ。もう一ひねり欲しいかな。
 何か平等かという問題は基本的な話だけに奥深く、機会の平等と結果の平等が違うことを前提に、こぼれたときのセーフティネットを用意することが重要なのです。給付付き税額控除もそのひとつ。
 主人公たちは話のわからん連中は相手にしないというスタンスのようですが、それが正解なのかもしれません。

【星をひとつ貰っちゃったので、なんとかやってみる3】【茂木鈴】【伊世】【NMG文庫】【小説家になろう】【惑星運営ラノベ】【呪い】【動画再生サイト】【公安部】【平等】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「異世界居酒屋『のぶ』 三杯目」 蝉川夏哉

2016-02-04 | 食・料理
「霊感を持たない料理人にも試行錯誤はできる」

 料理人をめざして衛兵をやめたハンスは、自分の店を出すために「のぶ」で修業をしているが、父親のローレンツは息子が料理人になることが気にいらなくて親子関係はギクシャク。しかも、いつまで経ってもまかない料理を認めてもらえないハンスも自信をなくしかけていた。
 一方その頃、帝都では政略結婚を進める先帝と若き皇帝の間で喧嘩が始まっていて……。

 2巻が見当たらなかったので3巻を先に読み始めたら、店員もいつの間にか何人も増えていました。
 お客の中には庶民もいれば王侯貴族もいて、その誰もが最後には美味しい食事を囲んで幸せになる話ですね。

【異世界居酒屋「のぶ」 三杯目】【蝉川夏哉】【転】【宝島社】【グルメ×ファンタジー小説】【異色グルメ小説】【するめの天ぷら】【串カツ】【土鍋豆腐】【鯖の味噌煮】【炊き込みご飯】【アップルパイ】【親子丼】【餃子】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「三田一族の意地を見よ(2)」 三田弾正

2016-02-04 | 戦国転生・歴史改変
 北條氏康の娘・妙姫と結婚し、三田康秀と名乗るようになった主人公だったが、甘い新婚生活を愉しむ間もなく北條氏使節団の一員に選ばれ、都での政治工作の任を負わされてしまう。
 これも良い機会だとのちに有名武将になる人々を仲間に加えながら旅を続けていくが、遠江国の井伊谷城で“女地頭”井伊直虎と遭遇。酔った弾みで食われて既成事実を作ってしまい、さらには衆道に走ったという噂まで流れ、早くも夫婦の危機であった……。

 今回は内政チートではなく、外交編。もちろん、すべて巧くいくはずもないけれど、史実以上の成果を上げ、将来への布石を1つずつ打っていきます。まさに北条家百年の計。
 単に「歴史を知っていたから巧くいった」とはならず、あくまで主人公の意志がはっきりしていて成長が見られるところが面白さのポイントです。
 康秀も胆力がついたねえと感心しつつ読了。

【三田一族の意地を見よ(2)】【転生戦国武将の奔走記】【三田弾正】【碧風羽】【MFブックス】【現代雑学系戦国ノベル】【足利義輝】【岩鶴丸】【衆道】【カレーライス】【分業制】【木綿】【製錬技術】【女武将】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「朱き強弓のエトランジェ2」 只野新人

2016-02-03 | VRMMO・ゲーム世界
「できるだけの力があるのに、見なかったことにして、尻尾を巻いて逃げるのは、それは『ひとでなし』のすることだよ」
 アイリーンはそう熱く語る。

 VRMMORPG「DEMONDAL」そのままの異世界に紛れ込んでしまったケイとアイリーンは、タアフの村を旅立ち、城郭都市サティナへ到着した。
 そこで帰還の手がかりを求めているうちに、知り合った子どもの誘拐事件に直面し、アイリーンが飛び出した……。

 キャラはチートでも、異世界はゲームではなく異世界としての現実はあるので、きれいごとばかりではないし、個人の力ではなんともできないことも少なくないよというところから始まる異世界冒険譚。

【Vermillion 朱き強弓のエトランジェ2】【只野新人】【フルーツパンチ】【このライトノベルがすごい文庫】【異世界ファンタジー】【VRMMO】【第二回なろうコン大賞】【盗賊団】【矢工房】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「火輪を抱いた少女1」  七沢またり

2016-02-02 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「時間の長さなんて関係ないよ。大事なのは切っ掛けだよ、切っ掛け」
 一緒に幸せを探すのに、出会ったばかりかどうかなんて関係ないとノエル。

 どこからともなくやってきた少女は莫迦だとみんなが思っていた。いつも「幸せになる方法」を探していた。
 だが、意外にも凄腕の狩人だった。
 戦争になれば、無邪気なまま、苛烈で冷酷になった。巨大な二股槍を振りかざし、瞬きする間に人を殺す。必要とあれば訓練を受けた軍人のようにも、深謀遠慮な参謀のようにも振る舞える。
 彼女はただ幸せを探しているだけだし、雨の日は嫌いなだけの赤毛の少女なのだが、人によって死神となり救世主となる……。

 敗色濃厚な戦場を駆け抜ける1人の少女の物語。ウェブで最後まで読んだけれど、書籍でまとめ読みしても面白い。主人公のキャラクターがいつものようにつかみ所が無く、かつ衝撃的。まさに苛烈で冷酷で無邪気。
 「最後の最後くらい自分で考えた方がいいよ。命令に従うか、従わないか、戦うのか、戦わないのか、生きようとするのか、それとも死を選ぶのか。だって自分の命でしょ?」というノエルの言葉が、たまたま読んだ水木しげるの戦争マンガとダブって見えました。ただ、水木しげるの戦記マンガの主人公とは違い、チートな美少女で、玉砕するどころかホワイトハウスに乗り込んでトルーマンをぶん殴りにいくような話になってますが。
 しかし、小さな少女が大きな武器を振り回して、大人の兵隊をまっぷたつにしていく話は痛快と残虐が入り交じって、なんともさじ加減が難しいと思いますが、そのあたり絶妙なバランスでとらえどころのない英雄譚に仕上げています。
 それは主人公自身に本当に自我と呼べるものがあるのかないのか、空っぽの器に雑多な思念が詰め込まれているだけじゃないかという不安定さが生み出す効果かもしれません。

【火輪を抱いた少女1】【晴れのち地獄】【七沢またり】【流刑地アンドロメダ】【エンターブレイン】【野盗】【皇位継承争い】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「教えて! 誰にでもわかる異世界生活術」 藤正治

2016-02-01 | 異世界転移・召喚
「チヤホヤしてほしい。可愛い女の子を助けて、カツコいいところを見せたい。感謝してチヤホヤしてくれると、男としてたいへん嬉しい」

 タヂカ・ヨシタツは気がついたら異世界で女剣士に剣を突きつけられていた。
 どうして異世界に飛ばされたかも分からないし、そもそも元の世界の記憶も途絶えていて、右手には覚えのない拳銃が一丁。けれども拳銃なんて弾丸を撃ち尽くしてしまえばそれまでで、彼自身に何か戦闘技能があるわけでもない。
 家なし、金なし、記憶なしで賞金稼ぎで糊口をしのぐはめになった三十路男が、冒険者志願の女性2人にちょいと親切心を起こしたことから、人生の分岐点に放り出されてしまう……。

 しょぼくれた男の成り上がり譚。成り上がりというより、自分に自信が持てず、実際何もなかった男が葛藤を抱えながら、能力を開花させつつ開き直っていく様を描いた、泥臭くも温かく、それでいてシビアな世界の物語。ランスから始まる、女奴隷を買えば無条件で主人公を慕ってあれやこれやと奮闘してくれるものだという風潮に、真っ向から石をぶつける問題作。
 主人公のしょぼくれて冴えない三十男が絶妙にイラスト化されていて大笑い。そして予想以上にカティア姐さん、表紙から目立ってます。

【教えて! 誰にでもわかる異世界生活術】【藤正治】【ぎうにう】【カドカワBOOKS】【発毛スキル】【隠蔽】【看破】【索敵】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする