many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

優しいサヨクのための嬉遊曲

2010-02-22 17:24:06 | 読んだ本
島田雅彦 1985年福武文庫版
昨日からのつづき、もうひとつくらい島田雅彦を挙げてみますか。
なんでもよかったんだけど、今日のところは、デビュー作を。
持ってるのは、1986年11月の第5刷。
村上春樹とか、村上龍とか、同時代人(?)のものを読み始めて、そのすぐ後くらいかな。
小林恭二を読み始めたのと、どちらが早かったか?
当時は、島田雅彦が何度目かの芥川賞落選とか、そんなことも話題になってました、たしか。
文壇の寵児だったに違いないけど、なぜかそういう方面では評価されないというか、運がないというか。
対照的に、平野啓一郎のほうは、芥川賞を当時の最年少だかで、あっさりとってますけど。

いま文庫のカバーを改めてみると、島田雅彦は1961年生まれで、大学4年の1983年に本作を発表してます。
もう二十数年が経過しちゃってるんだけど、やっぱ当時は20代前半の最も新しい世代の作家として注目されてたんだなぁ、だから評判になってて、私も読んだんだろうと思い出した。
小説としては、後の時代になって出てくるもののほうが好きだけど。
当時も「優しいサヨク~」は、そんなに面白いとも凄いとも思えなかったし。
さっき、ちょっと読み返したら、学生を主人公に描いてんだけど、やっぱ当代とは隔世の感があるなぁなんて思ってしまいましたが。
島田雅彦のデビューが21だか2、村上龍が23だか4、石原慎太郎も同じくらい、村上春樹は29デビューだったけど。
そういったものを読んでて、何だかわかんないけど、もし今自分が感じてることを書くとしたら、二十代のうち、それもヒマな学生のうちかなぁ、だなんてバカなことを漠然と当時は思ってたと思います、私。
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彼岸先生

2010-02-21 21:24:27 | 好きな本
島田雅彦 平成7年 新潮文庫版
きのうのつづき、島田雅彦。
カテゴリーを「好きな本」に入れちゃったけど、ほかの好きな本に比べたら、それほど繰り返して読んでないという点では劣ります。
しかし、やっぱりこの小説の存在は、私にとって大きいものでした。
十代後半にいろんな、いわゆる文学を読んでたんですが、大学に入って、特に後半の3・4年生のときに、文系だったんですが、いわゆる社会科学を一所懸命学ぶことになって、そのテの本ばかり、いっぱい読むことになりました。
卒業して、就職してからも、そういう傾向は変わらなくて、仕事の役に立ちそうなものとか、そう、趣味の読書が減って、必要に迫られた本を多く読む時期が長く続きました。
んで、仕事以外にも、プライベートっつーか、個人的な環境の変化から起因する嗜好への影響もいろいろあったりして、ほんと「小説」を読まなくなって久しくなったときがあったんです。
そんな時期に、たまたま手にとったのが、この本でした。書店で見かけて、ああ、島田雅彦、前はボチボチ読んだことがあったなー、ぐらいだったかもしれませんが。
読んでくうちに、独特の表現による、独特の世界にグイグイ引き込まれちゃいました。すごく(たぶんに個人的な受ける感覚かもしれないけど)力があるんです、島田雅彦の小説って。(このへん、島田雅彦と平野啓一郎は私にとって、白眉っつーか、特別な作家なのかもしれない。)
あー、(日本の)小説って、まだまだ面白い!って思ったものでした。
なにが、どう面白いのか、語るのは難しいです。本書は、よく「平成の“こころ”」(言うまでもなく「こころ」は夏目漱石のアレね)とか称されますが、「こころ」は難しいんで、私には単純な比較などできません。
そんなこんなの個人的体験だけが根拠かもしれませんが、私を、小説・文学に引き戻してくれたものとして、私はこの作品をフェイバリットに挙げざるをえません。
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彗星の住人(無限カノン)

2010-02-20 20:57:31 | 読んだ本
「彗星の住人」島田雅彦 2000年 新潮社
「美しい魂」平成19年新潮文庫版・「エトロフの恋」平成19年新潮文庫版
きのうからの続き。っていうか、平野啓一郎を読むと、なぜか島田雅彦を思い出してしまうことがあるんで。個人的な感覚によるつながりにすぎませんが。

この3冊は、続きの物語で、「無限カノン」三部作といわれています。
「彗星の住人」は2000年の単行本の初版を持ってるんだけど、あとの二つは2007年の文庫の初版です。
よくおぼえてないんだけど、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」以来、新潮社の書下ろし作品は信用してるし、島田雅彦は基本的に期待を裏切らないんで、「彗星の住人」が出たときは、面白そうなのが出たって飛びついて買ったはずです。
ところが、読まないでほっといて、ずーっと放っといて、2007年近くになって読んだんぢゃないかと
「決壊」みたいに1年くらい放置しておくならまだしも、6,7年読まずに置いとくというのは、ちょっと想像しづらいんだけど、まあ続編を読まないでいて、文庫になったとたんに買ったってのは、そうとしか思えない。
逆にいうと、続編が必ず読みたくなるくらい、「彗星の住人」は面白かったことは間違いないんで、単行本が出てるのに、あとの2冊を文庫出るまで待ってるとも思えない。

物語は、あっさり言っちゃうと、恋愛ものですが、近代から現代にかけての一族四代にわたる壮大(っていう単語は恋愛にはそぐわないな…)なストーリーです。
失恋っていうのは、そこらへんにゴロゴロあるんですが、「悲恋」っていうのは、なかなかいい物語にであえないんですけどね、この小説は悲恋の話。
将来の皇太子妃との恋、その結末はどうなっちゃうのか、読んでくうちに独特の世界にグイグイひきこまれちゃいます。それに身を任せて読み進むのは、一種の快感ですね。
私としては、二作目の「美しい魂」のなかに流れる切なさが、好きですねぇ。

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顔のない裸体たち

2010-02-19 21:02:51 | 読んだ本
平野啓一郎 平成20年新潮文庫版
前回のつづき、平野啓一郎。
これは、「決壊」買ったころに、文庫が出てたんで、買ってすぐ読んだ。
当時、読書の機会が、飛行機や電車での移動のときってパターンが増えてたんで、文庫だとすぐ読むんだよね、単行本2冊組だと1年間も本棚に飾って放置しとくのに。
この小説は、やはりネット社会時代(っていうのは現代ってことか)を描いたもので、出会い系サイトで出会った男と女が、やがて裸の写真をネット上に掲載して、なんてことを書いてる。
それだけだと、なんのこっちゃってことになるんだけど、顔を隠すとか、匿名を装うとかってことで、ネット上では、ふだんの自分とは違うことをしちゃうっていう、現代の人間のヘンなとこに注目したってのは、テーマとして面白いと思うんだよねー。

私も、ときどき、何かヘンだから、ブログは実名でやろうかなって思うときがあることはあるんだけど。
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決壊

2010-02-17 21:21:16 | 読んだ本
平野啓一郎 2008年 新潮社(上下巻)
なんか最近ここに書くものといえば、20年以上昔に読んだものばっかりになってきちゃったので、たまには比較的最近読んだものを。
「決壊」は、2008年の夏ごろかな、かなり話題になってたんだと思います。
若いころのように本屋ブラブラすることをしなくなってんのに、そんな私の耳というか目に入ってくるんだから、相当なもんだったんぢゃないでしょうか。
当時、夏は非常に忙しい毎日だったんで、10月にそんな生活が一区切りついたところで買ったんだったと思います。
で、すぐ読めばいいのに、なんだか(心身疲れてるときにヘビーな本に向かうのは難しいことがあります、最近)ほったらかしにしといて、ほんとに読んだのは、ついこのあいだ。去年の末だったかな。
読みだしたら、あっという間でしたけど。
お話自体は、くら~くて、なんつーか救いがない話です。ほんと、これこそ若いころ読んでたら、かなり心に傷をくらっちゃったんぢゃないかと思います。
表現としては、非常に現代的なものを用いているんで、某巨大掲示板の文体とかがそのまま出てきます。うん、ネット上の書き込みは、非常に重要なファクターとなってますし。
もし『ライ麦畑でつかまえて』が、50年代の若者の言葉を使って、効果をあげるとともに、貴重な価値があるとしたら、後年この小説だって2000年代最初の10年の日本の文化をよくとらえてると評されるかもしれません。
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