岩波新書の中国の歴史シリーズ第4巻が出た。
今回は、スパンは、明の時代に絞っているが(前3巻に比べ、極端に短い)、モンゴル民族から、国を取り戻したのもつかの間、内憂外患が続き、混乱の中滅亡し、清の時代に入るところまでを描く。
北との軋轢は、従来と変わらない。そのため、江南発祥の明は、北にも都を設け、人材も北に配そうとするが、南の反発にあい、南北の対立は続く。
300年近く続いたのだが、室町時代のように、不安定な状況が続くことになった。
それに輪をかけたのが、貿易対策。
貿易により富を得たいが、国防の問題もあり。最初は、朝貢で富の独占を図るが、途中から、江戸時代の日本と同じような鎖国体制とした。しかし、規制はザルで、強いものが富を得る混乱状態となる。倭寇の動きも活発で、琉球、長崎などは、その玄関口になった。
中国側では、福建、広州などの南部が中心。
日本の銀(石見)と、新大陸(メキシコ?)からの銀が大量に流入したことも、富の争いに拍車をかけた。
そこにポルトガルもやってきて、豊臣秀吉が、朝鮮経由で、乗り込んできて、皇帝は、暴君が、続き、ぜいたく三昧で、遊び惚けるというとんでもない状態になっていく。
ベトナムも傘下に収めたが、途中から、冊封に戻した。
国内がままならないのに、勢力を拡大している場合ではなかった。
宗教的には、より儒教的な色彩の強い朱子学から、その反発ともいえる陽明学が勢いを得て、混乱に拍車をかけた。
そして、ついに、内乱状態となり、最後に満州族の清に倒されてしまう。
内乱時の一群は、ビルマ方面へ、一群は、台湾に逃れて、明の再興をもくろんだが、夢と消えた。
台湾に逃れた人々は、ポルトガルを追い出し、国民党が逃れてくるまで、台湾で主導権を握ってきた様子は、台湾を南から北へ旅行した時に見た。
それにしても、何という混乱。皇帝が悪いのか、参謀が悪いのか、民が悪いのか。
戦いがやめられない中国の特徴が、極端に表れた時代ということかもしれない。
グローバルの波がじわじわ押し寄せていたのに、それへの対応策もなかった。
日本は、明や清の陰で、江戸時代、幕末まで、鎖国できたことが、徳川幕府の安定を続けられた大きな要因なのかもしれない。
まさに島国のメリットを享受できた?
明がこんなにごちゃごちゃだったとは。理解していなかっただけに、面白かった。