本書は、岩波新書の中国の歴史シリーズの完結編。
まだ、出たばかり。
めちゃ、面白かったし、勉強になった。
中国の歴史というと、壮大すぎて、つい興味のある古代の方(秦、漢、三国、隋、唐等)に目が行ってしまうのだが、本書は、清から現代につながる400年を、ポイントを絞って、一気に解説してくれる。
清というと、混乱の明の時代から、安定的な時代、特に国域では最大の時代が、到来したものと思っていたが、とんでもない。
明の混乱から、清による統一が完成するまで、かなりの時間がかかっているし、統一といっても、地域によって異なるいろんな形態での統治であり、かなり緩い、中央統治であった。
そのため、中華民族の比率がどんどん上がり、中央と、地方との絆はどんどん希薄になり、ふたたび混乱に陥る。
皇帝が実質支配できていたのは、中央のみで、その他は、秘密結社が支配する社会ができあがった。
タイミングが悪いことに、欧米が産業革命以降、急速に経済が発展したのに比して、中国は、相手を信用しない気質があり、資本が集中せず、産業化が進まず、国内は乱れ、各地域が、欧米と独自に交渉するようになり、それに歯止めをかけようとしたのが、西大后、李鴻章の時代だが、時すでに遅し。
日清戦争にも敗れ、国民党の時代、国共合作の時代(抗日戦争)、共産党の時代と、現代へ続く流れになる。
そして今の習近平は、過去の栄光を取り戻そうと、内部粛清を行った上で、過去の最大の国域を前提とした世界戦略を強引に推し進めようとしている。
本書は、最後に、そもそも中国とは何なのかを問う。
その時々で、支配民族も異なり、国域も異なり、時代時代で全く違う中国があった。
つまり、今の中国と、昔の中国は、別物であり、将来の中国も別物であるということ。
中国から様々な文化を受け継ぎ、特に漢字という、日本人にとって、もっとも重要なツールをいただきながら、その本家本元の真の姿がつかめない。
その状況は、過去も現在も変わっていない。
中国を知るには、まずこの5巻から初めてもいいのではと思わせるほどの、良書だと思うが。