「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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親は、子の財産を勝手に処分できるか。子の財産の保護と取引の相手方の保護との衝突する利益の調整法は?

2013-06-05 09:22:58 | シチズンシップ教育
Ⅰ、親が、子の財産を勝手に処分した例。

 問1では、親の債務の弁済目的で売却処分。(いわゆる、利益相反行為)

 問2では、子の教育資金に用いる目的で売却処分したが、気が変わって債務の弁済に使った場合((売却時点で、利益相反行為ではなかったが、子の財産である売却代金を親が横領)。


 取引の相手方の保護も図りながら、さて、子Bの利益を保護する法律構成はいかに。
 子Bは、親が勝手に売った相手Cから、自分の土地をとりもどすことができるか。
 自分の土地の売却代金を、親が自分の債務の返済として弁済を受けたDからとりもどすことができるか。


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旧司法試験 民法論述問題 (平成14年度第1問)

 Aは、妻とともに、子B(当時18歳)の法定代理人として、Cに対し、Bが祖父からの贈与により取得した甲土地を、時価の500万円で売却して引き渡し、所有権移転の登記をした。Aは、妻の了解の下に、その売却代金を、AのDに対する500万円の債務の弁済に充てた。Aは、Dに弁済する際、甲土地の売却代金により弁済することを秘していたが、Dは、そのことを知っていた。AがDに弁済した時、A夫婦は無資力であった。その後、Bは、成人した。
問1 A夫婦が売却代金をAのDに対する債務の弁済に充てるために甲土地を売却したものであり、Cは、甲土地を買い受ける際、そのことを知っていた場合において、次の各問について論ぜよ。
⑴ Bは、Cに対し、甲土地の返還を請求することができるか。
⑵ CがBに対して甲土地を返還したとき、Cは、Bに対し、500万円の
支払を請求することができるか。

問2 A夫婦が売却代金をBの教育資金に用いるつもりで甲土地を売却したが、売却後に考えが変わり、売却代金をAのDに対する債務の弁済に充てた場合において、Bは、Dに対し、500万円の支払を請求することができるかについて論ぜよ。


Ⅱ、子Bの財産の保護と取引の相手方Cの保護との衝突する利益の調整法は?

1)原則論で考えるなら、

 親は、親権者として、子の財産の一切について包括的な代理権を有している(民法824条)。ただし、利益相反行為は除く(民法826条)。

 問1は、利益相反行為であり、親が、親権者としての包括的代理権の権限外の行為をしたことに当たる。

 なら、親権者としての包括的代理権を基本代理権として、民法110条を適用することが可能か。

 民法110条は、権利外観理論を基礎とするから、法廷代理権を基本代理権として民法110条を使うこと自体おかしい。→結果、取引の相手方の保護ができなくなる。
 親の行為を子が監督するなどありえないので、子の帰責性を観念することができず、権利外観法理は使えないため。)

2)民法826条にいう利益相反行為は、親権者の内心にある意図、動機を度外視して、行為を外形的にみて、親権者と子の利益が相反する場合を意味すると考える。
 →結果、取引の相手方の保護する機能を果たすことが可能となる。

3)外形的に判断されてしまうと、逆に子の利益はどう守るのか?
 →代理権の濫用により、子の利益を守る。

 代理権の濫用とは、「代理人が、自己または第三者の利益を図る目的でする行為」

4)代理権濫用の代理行為は、有権代理?、無権代理?→判例・多数説は、有権代理。
 代理の意思とは、「本人に効果を帰属させる意思」であって、「本人の利益を図る意思」ではない。
 ただし、取引の相手方が、代理人が代理権の濫用の事実を知り、または知ることができる場合は、例外的に代理人のした法律行為の効果を本人に帰属させない。(民法93条ただし書類推適用、信義則、権利濫用のいずれかを用いて説明。)

Ⅲ問1(1)の整理
 
1)本件売却行為は、外形的には、Bにとって不利益であるものの、A夫妻にとっては有利とまではいえず、利益相反行為とは言えない。

2)本件売却行為は、取引の相手方であるCが、Aが甲土地売却代金をDに弁済する意図で、甲土地売買契約に及んだことをを知っており、Cは悪意。

3)従って、A夫妻・C間の甲土地売買契約は「もっぱらAの利益を図る意図の下に、Bの利益に反する行為」と言え、甲土地売買契約は、Bにその効果を帰属させない。

4)子Bは、悪意のCに対し、甲土地の返還を請求しうる。


Ⅳ問1(2)

1)AC間の甲土地売買契約の効果がBに帰属しない結果、CがBに甲土地を返還したとしても、Bが甲土地売買代金を受領していない以上、Cに対し、甲土地売買代金返還義務を負わなければならない者は、Cより甲土地売買代金を受領したA夫妻である。
 BがCに代金返還義務を負うことはありえない。

2)ちなみに、
ア、CのBに対する500万円についての不当利得返還請求も、Bには500万円の利得がないため、成立しない。

イ、CのBに対する500万円についての不法行為に基づく損害賠償請求も、Bには故意・過失がないため、成立しない。


*********************

Ⅴ問2 子Bは、父Aの債務の弁済の相手Dから、自分の土地売却代金を取り戻すことができるか。

その1:詐害行為取消を用いる方法
1)本件売却行為は、外形的には、Bにとっての教育資金目的であり、利益相反行為ではなく、代理権濫用でもないため、甲土地売買契約は、Bにその効果を帰属する。

2)ただし、その教育資金を、その目的通りにAは用いず、AのDに対する債務の弁済に用いた。すなわち、自己が占有する他人(子B)のものを親Aは横領した。=不法行為。
 よって、子Bは、Aに対し、Aによる横領金について不法行為に基づく損害賠償請求権を有している。

3)Aが無資力であるため、Bは、2)記載の損害賠償請求権を被保全債権として、AによるDに対する債務弁済行為を詐害行為として取り消す方法が考えられる。(民法424条)

4)弁済は原則として詐害行為にならない。ただし、弁済が、害意ないし通謀に基づいてなされたときは詐害行為となる。

5)本件では、AによるDに対する債務の弁済については、AのBに対する害意に基づくものであり、かつDは横領金による弁済であることを知っていたのだから、通謀ないし害意を認定できる。

6)したがって、BはAに対する不法行為に基づく損害賠償請求権を被保全債権として、AによるDに対する債務弁済行為を詐害行為として取り消すことができる。

その2:不法行為
 Dの弁済受領行為は、Bに対する関係で、不法行為となる。
 不法行為に基づき、Bは、Dに損害賠償請求することができる。

その3:不当利得、即時取得
1)民法192条では、Dが善意・無過失ならDは、財物の所有権を取得しうる。
 Dが、悪意または有過失ならDは、財物の所有権を取得できない。

2)金銭ではあるけれども、1)の考え方を用い、横領金であることについて、悪意のあるDにBは、不当利得返還請求できる。


以上

 

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