仕事の関係で道東を訪れていた群馬大学の片田教授が市役所を訪ねて来てくれました。
片田先生は、岩手県釜石市で子供たちに長く防災教育を指導し、東日本大震災の津波のなかで「釜石の奇跡」と呼ばれる子供たちを避難劇を生み出しました。
「釜石の奇跡」とは、釜石東中をはじめとして、釜石市内で約3000人の小中学生のほとんどが押し寄せる巨大津波から逃れて無事だったことを指します。
この「奇跡」を導いたのは片田教授による、「想定を信じるな」「最善を尽くせ」「率先避難者たれ」という「避難の3原則」の提唱で、小中学校の先生たちと一緒に防災教育の指導にあたってこられた成果でした。
※ ※ ※ ※ ※
道東では根室市の落石漁港で漁民の皆さんと防災に関する交流を深めてきて、津波襲来時の対策や避難行動について地域と学習をしてこられたのです。
片田先生の防災意識向上のための問題意識は、「コミュニケーション・チャンネル」です。
「講演会でも、『地震が発生して津波が来ると思ったら何としても避難してください』と何度も話しますが、講演会は何度行ったとしても興味のある人が何回も来るばかり。来ない人が問題だというのに、です」
「話を聞いてくれる人を増やすにはどうしたらよいですか?」
「システマチックに聞いてくれる人を増やすために、学校で防災教育をやることを考えました。子供が学校で習ったことを家で話しますね。それを親も真剣に考える。子供を救うために親は何をしなくてはいけないか、も伝えることで、子供を介して家庭の防災意識も高まります」
「なるほど」
「また、防災教育を10年間続ければ、12歳の子供は22歳の大人になります。防災の心得がある大人が増えれば結婚して育てる子供にも家庭教育で防災意識を育てることも期待できます。そうやって地道な努力を続けることで、防災を正しく意識できる市民を増やし、助かる人を増やすことに繋がると考えたのです」
「鍵は、誰にどのように話せば効果的に防災意識を持った人を増やせるか、ということです。コミュニケーションの繋がり(=チャンネル)をどこに求めるかを間違えると全く効果は出ませんが、逆にそれが正しければ効率的に情報を伝えることができます」
※ ※ ※ ※ ※
片田先生は、その町に住むことの魅力とリスクをしっかりと把握し、町に住む作法を身につけなくてはいけない、と言います。
「海辺の町に住むということは、海からの産物や海を使った仕事があるという恵みがありますが、同時に津波などの海に帰来する災害もあるということです」
海の恵みを享受しつつ、海に帰来する災害のリスクはできるだけ軽減する、津波に対しては非難するという、自分の中でこの両方をバランスすることこそ、海辺の町に住む作法だと言えるでしょう。
片田先生は、「教育には三種類ある」と言います。防災教育にもそれが言えるのですが、三種類とは、①脅しの教育、②知識の教育、③姿勢の教育の三つです。
①の脅しの教育は、「○○しないとひどい目にあうぞ」というものですが、これは時間がたてば効果を失うとともに、地域を嫌いになる教育です。これでは得るものが多くありません。
②の知識の教育は、教えられたこと以上のことを学ばなくなる傾向にあります。自ら学ぶということが身についていないからです。
③の姿勢の教育は、これこそが防災教育において進められるべきもので、自然からの恵みと災いを適切に評価し、無用に恐れすぎることがないように導きます。地域を愛し、不当に貶めることを良しとしません。
そういうハイ・インテリジェンスな市民を数多く育てなくては、防災意識が向上したとは言えないのです。
※ ※ ※ ※ ※
片田先生の言い方は非常にわかりやすいのですが、こうした啓発活動を継続して行えるかどうかが最大のポイントです。
危機意識というたがはすぐに緩むもので、緩むのは仕方がないとしてもそれを放っておかずに気付いた時にはすぐにタガを締めるべき。
これさえしっかりしていれば、防災危機意識を高く保つことも可能となるでしょう。
私流に言えば「防災のための生涯学習」ということになるでしょうか。
釧路のこれからの防災にもこうした考え方を大いに参考にしたいものです。
片田先生は、岩手県釜石市で子供たちに長く防災教育を指導し、東日本大震災の津波のなかで「釜石の奇跡」と呼ばれる子供たちを避難劇を生み出しました。
「釜石の奇跡」とは、釜石東中をはじめとして、釜石市内で約3000人の小中学生のほとんどが押し寄せる巨大津波から逃れて無事だったことを指します。
この「奇跡」を導いたのは片田教授による、「想定を信じるな」「最善を尽くせ」「率先避難者たれ」という「避難の3原則」の提唱で、小中学校の先生たちと一緒に防災教育の指導にあたってこられた成果でした。
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道東では根室市の落石漁港で漁民の皆さんと防災に関する交流を深めてきて、津波襲来時の対策や避難行動について地域と学習をしてこられたのです。
片田先生の防災意識向上のための問題意識は、「コミュニケーション・チャンネル」です。
「講演会でも、『地震が発生して津波が来ると思ったら何としても避難してください』と何度も話しますが、講演会は何度行ったとしても興味のある人が何回も来るばかり。来ない人が問題だというのに、です」
「話を聞いてくれる人を増やすにはどうしたらよいですか?」
「システマチックに聞いてくれる人を増やすために、学校で防災教育をやることを考えました。子供が学校で習ったことを家で話しますね。それを親も真剣に考える。子供を救うために親は何をしなくてはいけないか、も伝えることで、子供を介して家庭の防災意識も高まります」
「なるほど」
「また、防災教育を10年間続ければ、12歳の子供は22歳の大人になります。防災の心得がある大人が増えれば結婚して育てる子供にも家庭教育で防災意識を育てることも期待できます。そうやって地道な努力を続けることで、防災を正しく意識できる市民を増やし、助かる人を増やすことに繋がると考えたのです」
「鍵は、誰にどのように話せば効果的に防災意識を持った人を増やせるか、ということです。コミュニケーションの繋がり(=チャンネル)をどこに求めるかを間違えると全く効果は出ませんが、逆にそれが正しければ効率的に情報を伝えることができます」
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片田先生は、その町に住むことの魅力とリスクをしっかりと把握し、町に住む作法を身につけなくてはいけない、と言います。
「海辺の町に住むということは、海からの産物や海を使った仕事があるという恵みがありますが、同時に津波などの海に帰来する災害もあるということです」
海の恵みを享受しつつ、海に帰来する災害のリスクはできるだけ軽減する、津波に対しては非難するという、自分の中でこの両方をバランスすることこそ、海辺の町に住む作法だと言えるでしょう。
片田先生は、「教育には三種類ある」と言います。防災教育にもそれが言えるのですが、三種類とは、①脅しの教育、②知識の教育、③姿勢の教育の三つです。
①の脅しの教育は、「○○しないとひどい目にあうぞ」というものですが、これは時間がたてば効果を失うとともに、地域を嫌いになる教育です。これでは得るものが多くありません。
②の知識の教育は、教えられたこと以上のことを学ばなくなる傾向にあります。自ら学ぶということが身についていないからです。
③の姿勢の教育は、これこそが防災教育において進められるべきもので、自然からの恵みと災いを適切に評価し、無用に恐れすぎることがないように導きます。地域を愛し、不当に貶めることを良しとしません。
そういうハイ・インテリジェンスな市民を数多く育てなくては、防災意識が向上したとは言えないのです。
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片田先生の言い方は非常にわかりやすいのですが、こうした啓発活動を継続して行えるかどうかが最大のポイントです。
危機意識というたがはすぐに緩むもので、緩むのは仕方がないとしてもそれを放っておかずに気付いた時にはすぐにタガを締めるべき。
これさえしっかりしていれば、防災危機意識を高く保つことも可能となるでしょう。
私流に言えば「防災のための生涯学習」ということになるでしょうか。
釧路のこれからの防災にもこうした考え方を大いに参考にしたいものです。