北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

阿寒湖を自然遺産候補地に~地域連絡会議

2012-07-28 23:45:38 | Weblog
 朝一番の飛行機で東京から戻り、空港からは直接阿寒湖畔へと向かいました。

 阿寒湖畔では午後から第一回の阿寒湖世界自然遺産登録地域連絡会議を開催するのです。

 この会議は、阿寒湖の世界自然遺産候補地選定に向けて、地域での情報共有を図り、併せて一体的な取り組みを進めるために、関係機関や団体との連絡調整を行うことを目的に、本日設立するというわけ。

 会の構成は、釧路市、地元関係団体、環境省、林野庁、北海道、弟子屈町などで、およそ世界自然遺産に向けて関係のありそうなところは皆さん趣旨に賛同して参加してくれることとなりました。


 【市長のあいさつ】


 国においては、世界自然遺産候補地として十年前に知床、小笠原諸島、琉球諸島を剪定し、ユネスコの世界遺産委員会に推薦を行いました。

 その後既に、知床は平成17年に、また小笠原諸島は平成23年に世界自然遺産に登録されました。

 世界自然遺産を担当する環境省としては、残りが琉球諸島の一つとなったことで、次に推薦をすべき対象について検討を始めようとしています。

 実は阿寒湖は、かつて阿寒・屈斜路・摩周という組み合わせで、世界有数のカルデラ地形として世界自然遺産登録を目指しましたが、他の地域でもっとすぐれた地形・地物があるということでこの切り口では国内予選を通過しなかったという過去があります。

 同じ理屈ではもう無理ということですが、そこで登場したのがマリモを群落で生成させる世界で最も特徴ある生態系を有する湖というプレゼンテーションができないか、というのが今回の我々の思惑です。


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 今回の会の中では、環境省釧路自然環境事務所の中山次長にお願いをして、世界自然遺産の概論と、阿寒湖の可能性について、あくまでも【個人的なアドバイス】ということでご意見を伺いました。

 中山次長は相談を受けた当初は、「マリモの阿寒湖では無理だ」と思ったそうですが、これまでの研究成果を受けて、いかにマリモが球状にしかも大群落を形成することが実に多くの偶然の産物なのか、ということを知って上手なストーリーができる可能性が次第に高まるのを感じている、とのこと。

 しかしやはりマリモだけでは弱い印象で、特に生物としてのマリモは研究が進んでいるものの、それを育む森林生態系や地質学的な研究がまだまだ不十分と感じられるとのこと。

 今後の積み重ねが重要です。


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 今回の地域連絡会設置については、せっかくの機会なので、マリモの群落の現状を見学したい、と環境省にお願いをしていたところ、許可が下り、阿寒湖のチュウルイ湾にある群落を見学することにしました。




 マスコミ各社も注目をしてテレビも各社来てくれ、一緒に現場の見学に参加してくれました。




 チュウルイ湾からは漁船を出して大群落のある周辺まで向かいましたが、今日は青粉(アオコ)という浮遊性の藻が発生していて透明度が悪く、残念ながら水面上から湖底の群落を見ることができませんでした。




 群落があるという周辺は葦が茂っているのですが、マリモ研究をしている学芸員の若菜さんは、いつ見ても同じところに同じ大きさのマリモ群落があることを不思議に思っていたそう。

 ところがそれは研究を進めるうちに、もう少し大きくなると転がりやすくなって岸に近づいて来るし、小さければそこまで転がってこられないのだ、ということに気が付いたそう。

 
 若菜さんは、「自然はそういうフィルターを偶然に創っているんですねえ」と研究すればするほど新しいことが分かってくるマリモの世界を巧みに案内してくれます。


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 大群落は見られないためにもっと浅い岸辺付近を探索。すると直径25センチくらいのお供え餅のようにぺったんこのマリモを発見しました。

「これくらいの大きさになると中が空洞になってくるのと、上手く転がらないと上は厚く下が薄くなります。すると薄いところが弱くなって穴が開いてしまうんです」




 それでも岸辺には俵のような形の小さいマリモも見られました。

「地球上の生物で、自然に球状になるものってマリモだけなんです。植物としてのマリモは、全体を維持するためには表面で光合成を行わなくてはなりませんが、球状になるともっとも表面積が小さい形なので不利になるからです。しかしこの岸辺に打ち寄せる波が絶妙な転がりを誘発して、それが外的刺激として丸いマリモを形成していますが、これは実に微妙な条件の積み重ねなんです」



 
 マリモの現場はなかなか見ることができないものですが、すばらしい機会をいただきました。

 世界自然遺産も、その目的は世界に唯一の自然を後世に保全して残すということが本来です。

 マリモのいる阿寒湖を世界自然遺産にして、いつまでも残したいと思います。 
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