いよいよ東北の旅最終日。朝から強い雨の中、ホテルを出発して南部鉄器の「岩鋳(いわちゅう)鉄器館」を訪ねました。
こちらは南部鉄器の展示販売をしているところで、様々な鋳物の作品が見られるほか、職人さんたちが実際に鉄瓶などを作っている所の見学もできるところです。
南部鉄器は、古いものは平安時代にこの地方に技術者を招き入れて鋳物を作らせていたという記録があるそう。岩手には、砂鉄、木炭、鋳型の材料となる質の良い砂と粘土が調達できたことから産業として盛んになったのです。
江戸時代には藩の支えもあって日用品はもちろん、梵鐘や燈籠などの大作もつくられ、さらには幕末には大砲も製造されたそう。
鋳鉄の品は何度も廃りかけたことがありましたがそのたびに盛り返してきた不思議な歴史があります。
明治になって後ろ盾となっていた藩がなくなって廃れかけた時には、いくつかの展覧会で賞を取ったり、また東北本線が開業したことで生産と流通の体制が整って見事に売れ行きを回復。
明治後期に再び廃れかけた時には、時の皇太子(後の大正天皇)が東北を行啓された際、八代小泉仁左衛門が鉄瓶の製造を実演して見せて話題を呼んだことをきっかけにまた盛り返す。
終戦後にはアルミニウム製品などに押されて日用品としての地位が大きく後退しましたが、近年になって鋳物製品の鉄による健康への効果が見直されたり、煮る焼くなどの調理用具としての引き合い、さらに海外からも注文が増えるなど、また違った形で人気が出ています。
特にここ岩鋳さんでは従来の鋳物にはなかった、赤や緑などカラフルな鋳物作品を作り海外での人気が出ています。
展示品を眺めていて、(ちょっとセンスが良いなあ)と思うような作品は注文から納品まで三か月から半年待ちというものもあって、人気のほどがうかがえます。
お店の方は、「鋳物は一つ作るのに一か月くらいかかるのと、なかなかすぐに作るというわけにはいかなくて申し訳なく思っています」と話してくれました。
さんざん見学して眼福を得ても我々は小物しか購入しませんでしたが、考えてみると我が家にはかつて買った鉄瓶があるので、まずはこれを使って健康なお茶やコーヒーを飲んでみようと思います。
「錆びたらお茶を煮出してタンニンと反応させることで錆びを防げますよ」とも。鋳物について良い勉強になりました。
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盛岡駅から再び北海道新幹線「はやぶさ」に乗り込んで帰路につきました。
しかし新函館北斗駅で、札幌から来た特急が函館で折り返して札幌へ向かうところが、倒木があったとのことで大幅な遅延が発生。予定よりも一時間以上遅れての札幌到着。
実は旅の途中、二人して風邪を引いていたようで全体に具合が悪い中での旅だで、地域の名物もほとんど食べられない情けない旅でした。しかしそれでも事故もなく無事に帰ってこられたのでよしといたしましょう。
旅の総括はまた後日。お付き合いいただきありがとうございました。