ある大学で、「大学は、建設産業のどのようなニーズに応えられるか」というテーマでの意見交換の場がありました。
私のイメージは、先端的な機械開発や技術試験などで、効率的な仕事の仕方を開発してほしい、というものでした。
しかし、「最近は北海道の大学の工学部でも、舗装を研究している先生がほとんどいなくなりましたね」と言われ、ちょっとがっかり。
また、ある程度技術が確立してきて、いわゆる研究をして未知の部分を探求するというニーズがもうあまりない、という背景もあるようです。
それに対して、実際に舗装工事を施工する会社の部長クラスの方からは、もっと切実な悩みが紹介されました。
それは、「最近は工学系の勉強を修めたうえで会社に入ってくる若者が少ないです。なので、会社に入ってから改めて土木技術の基礎から教え込まなくてはいけません。しかし、社員が高齢化して年齢のギャップがあって社内で講義めいたことをすることが難しい。それに、工事の本数もそれほど多くはないので、実際の現場で経験を積むということも難しくなっています」というもの。
「そういうことを感じるので、大学では土木の技術を教えてもらって、その単位があれば、土木技術施工管理技士の受験資格が1年早くなるとか、そういう制度ができればありがたいと思います。若い社員が、一年でも早く資格を取れて、一人前になる事が早まるようなことにご協力いただけるなら、多くの会社が大学に殺到しますよ、きっと(笑)」
若い人たちの技術を養成する、というのはかつては専門学校が教育機関として担っていた部分ですが、昨今は、こうした専門学校が少子化で学生が集まらないことから、次々に閉校になり、まさにそのニーズの受け皿がない状態です。
最近は、人生100年時代を迎えて、"リカレント教育=学びなおし"ということが言われていて、生涯にわたって教育と労働や余暇など他の諸活動を交互に行なう教育システムの必要性が叫ばれるようになりました。
人生を充実させるための壮年や老年の方の学びなおしも確かに重要ですが、若者たちが、しっかりと知識と経験を充実させて、社会的に認められた資格保有者と言う形でこれからの社会を支える礎を築くということはもっと重要です。
専門教育ではなく、普通高校の教育を受けてきた若者が、職業として一つのジャンルを選ぶときにも、学びなおしは必要なわけで、こうしたことを教育機関がニーズとして捉えるということは、大事なことのように思います。
社会が健全に機能するためには、構成員一人一人の能力の充実が必要で、そこには高校や大学などの教育機関によるアプローチが効果的だと思います。
教育のあり様も、大きく様変わりしそうですね。