私こと、北海道開発局からの依頼で「地方自治体から見た北海道開発局」というテーマで職員研修講師を引き受けています。
研修内容は、社会状況の変化を背景に、地方自治体が抱える課題と地方自治体と国との関わり方の実際、自治体から見た国(開発局)と、国の職員として地方自治体にどのような目線を持つべきか、といったことです。
問題意識は、そもそも国の職員は仕事が組織として与えられて、その仕事を淡々とこなしていれば職務を遂行したことにはなる事。
しかし職務を遂行することで、どのような効果と貢献を最終的な国民に与えられているかを考えることが大切だという事。
そして、「国民のための国の仕事」と言いながら住民の日々の暮らしに直結した行政サービスを与えているのは市町村という地方自治体であることを考えると、市町村という存在そのものを考えるきっかけを持つことが大事だろう、という事です。
それになにしろ、国家公務員とはいえ必ずどこかの市町村の住民なわけですし、住民という立場でも市町村のことを考えるきっかけが必要だと思っているからです。
私自身が掛川市と釧路市という二つの市で助役・副市長を経験しているということから、「自治体から国の仕事・組織そして職員はこう見えているんだよ~」という話ができるわけですが、講義はおおむね好評で、「そういう視点は初めてでした」という声を多数いただいています。
しかし研修の中で触れる、『自分たちの住んでいる町がどうなるのか』ということは、職務上の教養に留まるものではなく、自分の人生の重要なテーマであるに違いありません。
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そんなわけで、暇を見つけては自治体をめぐる話題や問題に関するレポートを探しているのですが、今回改めて目からウロコの落ちるようなレポートを見つけました。
それが『自治体戦略2040構想』というキーワードのレポート。
地方自治体行政を所管する総務省に設置された自治体戦略2040構想研究会が2018(平成30)年に公表した「第一次報告」と「第二次報告」は、その後の第32回地方制度調査会の諮問文に反映されています。
その諮問文とは、「人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを迎える2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応する観点から、圏域における地方公共団体の協力関係、公・共・私のベストミックスその他の必要な地方行政体制のあり方について」というもので、これからの地方制度をどうするかという議論のたたき台になっているものです。
ここで示された「第一次報告」とは、2040年ころにかけて迫りくる我が国の内政上の危機を浮かび上がらせたうえでそれへの対応案を示し、「第二次報告」では、「新たな自治体行政はどうあるべきか」ということへの基本的な考え方が述べられています。
【自治体戦略2040構想研究会
第一次・第二次報告の概要】
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562116.pdf
【自治体戦略2040構想研究会 第一次報告】
https://www.soumu.go.jp/main_content/000548066.pdf
【 同上 第二次報告】
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562117.pdf
ここで前提となる問題意識はなんと言っても人口問題です。
人口が減ることと、質的に少子高齢化が進むという確実な未来を受けて、それを行政・制度としてどう変えなくてはならないか、ということを詳細に論じたレポート。
これは地方自治体職員ならばもちろんのこと、個々人の立場でも、自らの備え方や考え方をどのように変えなくてはならないかに重要な視座を与えてくれるものです。
このデータを見ていると、2015→2040にかけて試算されている人口変動は、縁のある静岡県掛川市がマイナス20%ほどで、北海道釧路市はなんとマイナス30%。
「迫りくる危機」のリアリティを感じつつ、今何を変え、どう変わらないといけないかを考え、そして行動に移すことが求められています。
行政もなにもかも今のように面倒を見ることはできません。何かをあきらめ、何かを捨てて、これからの身の丈に先んじて合わせるような改革が断固として必要。
これだけのレポートがタダで読めるのだから霞が関のシンクタンク能力ってすごいな、と思います。
(くだらないと思われるものがある)国会質問の答弁調整や、思いつきのような施策のフォローに追われずに、霞が関官僚の能力は志の高い業務に当ててほしいと思います。
真面目な行政担当者にはぜひご一読をお勧めします。