こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿』宮内悠介

2017-02-19 19:43:35 | 読書感想
十六歳の愼は、プロの囲碁棋士である。
しかし、棋具のことは分からない。
実際に木製の盤に触れるのは<八方社>で碁を打つときのみ。
物心ついたときには、コンピュータで碁を打っていた。

それがあるとき、一枚の棋譜に心を打たれた。
碁盤師・吉井利仙が、まだ棋士だったころのタイトル戦の二次予選だった。
それが利仙の最後の公式試合となり、跡取りのなかった秋山碁盤店に弟子入りし、五年の修業ののち三代目を襲名したのだった。

愼が魅せられたのが棋士としての利仙だったため、手合いの合間を見ては利仙につきまとい、指導碁を打ってもらおうとしていた。

今日も、いい榧(かや)の木を探して山に入る利仙についてきた愼だったが、その山で昔急死した碁盤師・黒澤昭雪の娘に出くわした。
その娘・逸美は、父親の事故死に疑問を持っていた。
果たして昭雪の死因とは?

囲碁に関わる事件を、利仙が解き明かしていくミステリ集です。
「青葉の盤」と表題作以外は、人が死ぬことはありませんが、やはりミステリとして面白かったのは、珍しく愼が謎を解く羽目になる表題作でした。
そしてラストの「サンチャゴの浜辺」は、ミステリとは言えないかもしれませんが、何とも寂寞とした思いを抱かせながらも、いい物語になっていました。

宮内さんのデビュー作は、ジャンル分けが難しいものだと感じましたが、最近はそこが分かりやすくなりました。
それの良し悪しは分かりませんが、頭の中の疑問符が減りました。
あと、何よりも面白ければ良いのですよね。
コメント
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