数年前のインターハイでの話である。女子の走り幅跳びのアップに付き添っていた時の事。10数名の選手が足あわせ、跳躍の確認をしていた。それぞれの指導者も選手にアドバイスしながら緊張感の中にあった時、突然一人のスタイルのいい選手が大声を出した。「いつも練習に来たことが無いのに、何んでこんな時ばかり言うんですか」サングラスをかけた若い指導者はスゴスゴその場を立ち去った。その選手は上位に入賞したが、何も教えられなくても毎日練習に出ていたら、選手はこんな事は言わなかったろうにと、少し可哀想になった。
指導者の中には名誉を欲しがる人がいる。私が強くした選手、俺が誰々の監督だ、と言わんばかりに強い選手を連れて歩き自慢する。確かにその指導者が強くしたとしたら黙っていても関係者は解るのに、魅力が半減する。「全国大会で数多く見られるのだが・・・」自分を知ってほしいと言う名誉欲と自慢から出てくるのだろう。(全国優勝させてる監督は沢山いて珍しくは無い。)選手には人間として良い子・悪い子・普通の子・がいる。強くする、勝たせる事を第一に取り組んでいたとしても、一人の人間の心の成長を一番知る事ができるのは指導者。強くするのも成功のうちだが、選手の人間性向上を知る喜びの方が、他人には見えないだけに真の喜び、胸はって自慢できる名誉である。技術指導だけに重点を置き選手の心を知らないとしたら、その選手は不幸である。