絵画は基本的にこの世に一点しかなくて、しかもたいてい作者の所有ではないという性格から、誰のものなのかというのが問題になるのがややこしい。著作権保護関係ないし。
ダメと思ったところから意外な突破口が開いたり、訴えを引っ張っていく主体が入れ替わったりとストーリーの綾のつけ方が巧い。
ナチの行為というのは、何度見せられても嫌悪を覚える。名画の略奪とユダヤ人に対する差別と迫害というのが人間性に対する侮辱として点で同列であることを実感する。
ウィーンからの脱出サスペンスがかなり冴えていて、同時に故郷と両親を捨てなくてはいけない苦悩もよく出ている。
ヘレン・ミレンの貫禄が作品全体の重しになっていて、こういうと何だが若いころ巨乳でセクシーなのが売り物だったのが信じられない話。
さりげなく豪華な配役で、アメリカでの最初の訴えを裁く女性判事がエリザベス・マクガバン(「ダウントン・アビー」の伯爵夫人)だったり、ワシントンの判事がヴィンセント・プライス(「未来世紀ブラジル」)だったり、ライアン・レイノルズの母親役がフランセル・フィッシャー(イーストウッドの元妻で「許されざる者」の娼婦のリーダー)だったり、上司がチャールズ・ダンス(「グッドモーニング・バビロン」のグリフィス)だったりする。
過去と現在と交錯させながら進行していって、ラストで一つになる構成が計算が立っている。
(☆☆☆★★)
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黄金のアデーレ 名画の帰還@ぴあ映画生活
映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』 - シネマトゥデイ