prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「母と暮せば」

2015年12月30日 | 映画
丸の内ピカデリーのフィルム上映で見る。フィルム・チェンジのマークを見るのなど久しぶり。二階席だったのでちょっと映写室の窓を振り返ると、ちゃんと二台の映写機を切り替えているのがわかった。
「ヘイトフル・エイト」がわざわざ70㎜フィルムで撮ったが、日本では上映できる施設がないという。35mmでいいから上映できないものか。

フィルムだと画面の暗い部分が沈んだまま潰れないで微妙なニュアンスを出しているし、逆に明るい部分もちょっと沈んだ感じが残る。いいかげんデジタル上映に慣れてしまったけれど、たまに見ると気のせいでなく違うと思う。劇場のカーテンを閉めないで黒味を残したままでいるだらしのない状態でないだけでもありがたい。

黒木華が死んだ恋人に義理立てて結婚しないでいるのを結婚させようとするのは井上ひさしの「父と暮せば」のモチーフであるとともに、「東京物語」の原節子の血縁ではない義理の娘の後添えの話ともつながってくるだろう。ご丁寧にも結婚相手が「父と暮せば」と同じく浅野忠信。もっともらしくいうと戦争にまつわるサバイバーズ・ギルト(生き残った者の罪悪感)の克服ということになる。
だいたい吉永小百合に被爆者をやらせるところにも当然「夢千代日記」を意識させるように仕掛けてある。

亡霊の二宮和也が生前そのままにおしゃべり、というのは幽霊譚にありがちな湿っぽさを払うとともにちょっと井上ひさしの饒舌体の再生といった感もある。
このところの山田洋次は「おとうと」「東京家族」など先人の業績の継承といった趣の作品が続いていたが、これもその一環であり、内容自体もいなくなった者からさまざまなものを受け継ぐことそのものになっていて、それらからまた一歩踏み出している。

最初まったく人間と同じように現れて、その後クラシックな幽霊の紋切型風にすうっと消えて手に持っていた物がぱたりと落ちるといった表現になる。日本では能に典型的なように生きている者と死んでいる者が同じ地平でやりとりをする伝統的な表現というか死生観があるわけだけれど、ここでは古めかしい表現に後退と見せてラストでぐるっとまわって新境地に着地してみせる。表現者が齢を重ねることで、特に80歳を過ぎるあたりから何か突き抜けてくる境地が山田洋次にも表れてきた。

山田組の新しい顔とすると加藤健一が図々しくて生活力があってそのくせ惚れている未亡人の吉永小百合に対しては純情という「馬鹿」シリーズハナ肇からつながっている役を快演。まあ舞台ばっかりで映像にはあまり顔を出さないけど、もうちょっと出てもいいと思う。

この映画に絡めて山田洋次と二宮和也と美輪明宏がNHKで鼎談していたが、特に苛烈な体験だとなかなか言葉にできない、それを伝わるように表現できるのが表現者だと山田が美輪に対して言っていた。
たとえばヴァイオリンをひょうたん型糸こすり器と呼んだ、というのをもうギャグにしてしまうあたりや、原爆を被爆した直後を人が炒られた豆みたいに撥ねている、と表現するのを聞くと何かはっきり目に見えてくる。
(☆☆☆★★★)


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母と暮せば 公式ホームページ

母と暮せば@ぴあ映画生活

映画『母と暮せば』 - シネマトゥデイ

12月29日(火)のつぶやき

2015年12月30日 | Weblog

「子孫に謝罪させない」というのは実にエモーショナルでミスリーディングなレトリック。謝罪が求められる主体は先の大戦の責任者(存命なら)だし、法人としての日本政府であって国民一般ではない。国民に「責任」があるとすれば、二度と戦争しない・させないこと、負の歴史含め記憶し続けること。

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これも漫画の社会貢献だね(^_^) // 浅見光彦シリーズ:その漫画…背景画は受刑者の苦労作 - 毎日新聞 mainichi.jp/articles/20151…

家畜人六号【小暮 宏】さんがリツイート | 98 RT

【大阪・軍艦アパート(大阪市営下寺住宅)】1931年建設。大阪府初の公営住宅。鉄筋コンクリート3階建て、風呂なし、水洗トイレ完備。煙突からの煙が軍艦を想像させた。「出家」と呼ばれる部屋毎の増築箇所が特徴的。2006年解体。 pic.twitter.com/tDtDAIbCAO

家畜人六号【小暮 宏】さんがリツイート | 26 RT

哀愁 #1日1本オススメ映画 これぞメロドラマ。南部圭之助が「甘い映画には違いないが、人工甘味料ではなく白砂糖の甘さだ」と評したのは有名。 pic.twitter.com/KJjpI7kZDo

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@kajiken7 ルーカスの父親がまさにそういうできっこない夢みるなと説教たれる人間だったらしいですね。それに潰されずに反発を作品に昇華できた、という場合もありますが。

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【本棚登録】『境界のRINNE(1) (少年サンデーコミックス)』高橋留美子 booklog.jp/item/1/B00UV5Q…


【本棚登録】『境界のRINNE(3) (少年サンデーコミックス)』高橋留美子 booklog.jp/item/1/B00UV5Q…


ステディカムの父、ギャレット・ブラウンとハスケル・ウェクスラー。ここからステディカムの歴史は始まった。『ウディ・ガスリー 心の旅』撮影時。 pic.twitter.com/z1SeX8q2xi

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今日はタルコフスキーの命日です。撮影監督ジュゼッペ・ランチが語る……タルコフスキー『ノスタルジア』 ? NOW SHOWING imagica-bs.com/nowshowing/blu…

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