屋内シーンでも望遠レンズで背景の庭や借景から座敷、手前の縁側まで全焦点で捉えた映像は黒澤明を思わせるが、色彩は淡く渋い。
姿勢を低くして一瞬で相手の手首などを切って戦闘能力を奪うところから始まり、いつの間にか間合いを詰めて急所を刺す立ち回りが斬新。
血しぶきの飛び方が噴水みたいなのとも最近のCGを使う上にかぶせたようなともまた違ってリアルだがどぎつくない。
岡田准一が殺陣に参加しているせいかどうか、間合いが通常の剣でのそれより素手の格闘技に近いような印象だが、どういう準備と発想から作られたのかおよそ素人の憶測が出る領域ではなく、詳しい解説はDVDなりの特典に期待したいところ。
かつての藩内の四天王と言われた男たちが家老をはじめとして腐敗を糺そうとして斃れていくのに、そのうちの二人と美しい女性との三角関係が絡むわけだが、女性が冒頭で死んでしまうのをはじめ、過去の経緯が今に反映していくあたりがストーリーテリングとすると堅くやや飲み込みにくい。
時代考証で椿はぽとりと落ちるのが首が落ちるようで不吉と武家屋敷には植えられなかったと聞きかじったことがあり、だから「椿三十郎」は考証をわざと踏み外したパロディ的な作りということになるが、ここでは落ちるのでは散る椿残る椿に志の伝達を託すといった象徴的な扱いになっている。
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