その正体の突き止め方というのがかなり陰謀論的な妄想に近い論理によるもので、いったん見つかった真相というのもアカシックレコードがかったすべてを操っている何者かを想定している決定論的な世界観が現れてくる。
前作同様、けっこう哲学的というか理性や自由意志に反するむしろ反近代哲学的。
デヴィッド・リンチと比較されたりしているが、多彩な悪夢的な表現が見もの。それがハリウッドという虚実定かならぬ土地柄とマッチしている。探偵役が明るく照らされた表面の薄皮一枚を踏み抜くと異様な世界が噴出してくるあたり「チャイナタウン」っぽくもある。
全編さまざまな旧作映画の引用がちりばめられているのも、その意味を考えろと誘っているみたい。
ちらっと出てくる上半身と下半身が分かれている死体、というのはブラック・ダリア(ハリウッド全盛期に起きた女優志願者猟奇殺人事件の被害者の通称)だろうか。
ヒッチコックの墓がひょいと出てくるので本物なのかと思って調べてみると、実在する施設には違いないのだが焼いた後の灰は太平洋に撒いたのだという。虚実が定かならぬ世界なのは現実にも嵌入しているみたい。
余談だが、ヒッチコックはカソリックのはずだが(生地のイギリスでは少数派)火葬にしていいのかな。
ちらっと冒頭のフレーズを弾くだけのザ・フーの「ピンボールの魔術師」もちゃんとエンドタイトルに載っている。
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