終盤で富山ナンバーの車が出てくるのでどこだかわかるけれど(もっと前に出てきているのかもしれないが)、あまり街の個性らしい個性を出さないようにしている感じで、どこにでもあるようなハンバーガー屋やゲームセンターやラブホテルといった背景がまた没個性的。
橋本愛と門脇麦の役名が「私」と「あたし」というのが、違うようで違わない、何かに埋没してしまう感じに対応しているよう。
しかし、その埋没しかけているような中のさざなみのような小さな違いを丹念に写し取ってもいる。
高校で太陽系の太陽みたいに他の生徒たちが集まってくる華やかな存在だったという男子の椎名、というのがちょっと「桐島、部活やめたってよ」の桐島を思わせて、しかし桐島と違って過去でも現在でも姿を現わし、特に現在の姿が逆にその憧れの空虚さを際立たせてしまう。
公共交通機関があまりなく車がなかったらどこにも行けないようで、久しぶりに再会する椎名がラストに出てくる教習所に勤めているのが収まりがいい。
長廻しを多用する演出がある程度まとまった時間を切り出してかなり複雑に行き来する時制のいわばブロックになるわけだけれど、若くて変化が激しい時期であるにも関わらず何者にもなれないままでいる、その変わらなさの方が目立つ。
「ここは退屈迎えに来て」 公式ホームページ
「ここは退屈迎えに来て」 - 映画.com