全編セリフはまったくないが、68分という短さだからさほど負担にはならない。
描かれるのは、一応人間と動物との関係が逆転した世界。
なぜ一応かというと、動物がリアルな表現でなく、かぶり物をかぶった人間によって演じられているからで、一見すると失笑してしまいそうなのを、本当に笑うより前にシーンを切り上げるといった手で対応している。
つまり初めのうちは後ろ姿やシルエットにしたり、クイックカットを使ってはっきりわかるより前に切り上げてしまうといった調子。
そして人間(の顔をした人間)たちは動物、特に家畜のように虐待されいともあっさり殺されていく。
全体が大きく三つのパートに分かれていて、半裸の男が首に鎖をつけられ引きずりまわされる情景と、数人の男女が家畜小屋に入れられる光景と、野原に銃を構えた鹿(人間)が佇んでいるところとが、曖昧に交錯する。
それぞれがどういう位置づけなのかわからず、場面の繋ぎも明らかにわざとブツ切れにして、たびたび黒味をはさんで繋がれているもので、流れがおそろしく悪い。という明らかにわざと悪くしている。
それでいて最後にこれまた一応ひとつの構造をなして終わるので虚をつかれる。
クイックカットで何が起きたのか一瞬わからない(巻き戻して見たが、やはり相当にわかりにくい)が、見間違えしないようにしている。
積極的に誉める気はしないが(星取表の類の評価はおそろしく低い)、出来そこないいうわけでもなく作り手はかなりの程度狙いで作っているとおぼしい。それが成功しているか、第一どういうつもりでこういうのを作ったのか判断に困るが。
「猿の惑星」調の逆転世界というにはちょっとムリがあるが、低予算なりのデフォルメした世界を作ろうと腐心した感じ。
ちなみに自分はスクリプトドクターの三宅隆太氏がラジオをお薦めしてので見た。