このチリ鉱山落盤事故と救出作戦があった時にこれこそ映画向けと企画者が殺到したらしいが、昔のエンテベ急襲作戦の映画化(「エンテベの勝利」「サンダーボルトGO!」)みたいに競作が意外とぱっとしないこともある。
同じ事件を描く映画企画は生きているらしいが、違う切り口を見つけるのはかなり難しいのではないか。
落盤事故のスペクタクルが最初の方に来てしまうので、あとの救出作戦の方はどうしても地味に見えてしまうのが難しいところ。
いかに鉱山が深いところまで掘り進まれているか、初めの方でえんえんと潜っていくシーンの長さでわかるのは秀逸。
鉱山会社や政府などが人気取りにやってる感演出に走ったり、心配する家族や世界中でニュースになっているあたり、まあ順当に一通りやっているけれど、それ以上にはいかない。
エンドタイトルで実際の事件の当事者たちが現れるのも定石。
アントニオ・バンデラスやジュリエット・ビノシゅといったスターもこういう平凡な人たちの話となると収まりが良くない。
「ゴルゴ13」でゴルゴが落盤で地底に閉じ込められ、どう人前に顔をさらさず脱出するのかというエピソードがあって、救出作戦に使われるカプセルなどが同じだなあと思ったりしたが(もちろん元のカプセルを忠実に描いたのだから似るのは当然)、ドリルで穴を開けるまでや、リフィーディング症候群(飢餓状態にいきなり多量の栄養をとると電解質の濃度が急激に変わって、最悪死に至る)を防ぐため普通の食料より前に液体状の栄養食を送る意味など、ゴルゴの方が短いこともあってメリハリ効いていたと思う。