西村晃と室田日出男の銀行強盗が、三國連太郎と春川ますみと小さな息子の一家に押し入って立て籠るサスペンスもの。
明らかにジョゼフ⋅ヘイズ原作脚本、ウィリアム⋅ワイラー監督の「必死の逃亡者」(1956)の日本版。
監督は深作欣二、脚本は宮川一郎との共作。1966年公開。
特に逃亡用の金の目処がつくまでの期間、妻子を人質にとられた三國が疑われないようにいつもと同じように会社に出かけて何事もなかったかのように振る舞うあたり。
ただ三國がやっていると、そのまま妻子を見捨てて逃げやしないか別のサスペンスも出る。事実、帰るのやめようかと迷う場面がある。「必死」のフレデリック・マーチでは考えにくい。
出社したはいいが誰もいないので警備員にどうしたのか訊くと、今日は土曜で半ドンですよと言われる。1966年は週休二日などなかったわけ。半ドンというのも死語に近いか。
子供の目覚まし時計の盤面にドナルド⋅ダックとミッキー⋅マウスがもろに描いてある。今だったらディズニーが文句つけるだろうな。
屋内シーンの演出はワイラーの緻密さは望むべくもない(日本家屋だと狭すぎて、よく近所にバレないなと思う)が、ロケシーンは今とはまるで違う高度成長期の東京の粗っぽいごたごたした街が写っている。
西村晃がさすがに悪役を好演。室田日出男は東映の組合活動をやりすぎて干されていたのを深作が一筆入れさせて出演したのだという。
ただし、また会社相手に暴れていったん解雇されたのを、復帰してピラニア軍団として人気を得ることになる。
ここでもでかい図体で大暴れしているのが地に見える。