医者を抱き込んで金持ちの老人が認知症などで一人で生活できないという所見の診断書を書かせ、法廷後見人になって老人を施設に強制的に収容させ、その財産を処分するというやり口でカネ儲けにいそしむ女をロザリンド⋅パイクが「ゴーン⋅ガール」の延長上的なイメージで演じる。
ヒドい話だが、ヒントになった実例があるらしい。
出だしでこのプランの邪魔になる施設の入居者の息子の訴えを取り上げた裁判で、法的な手続きではヒロインの方が手落ちなく、実の息子の方が施設で暴れたとか、おそらく身なりが悪く金もないといった理由で訴えを却下されてしまう。
いかに上っ面の体裁でケアのシステム(という以上に現代のシステム全般)が動いているかを端的に見せる。
医者も弁護士も施設の所長もみんな老人たちは自分の金儲けのカモとしか思っておらず、たとえばこれに立ち向かって親を救おうとする子供を主人公に据えたら座りはもっとよくなっただろうが、今書いた出だしでそういう可能性は破棄している。
思い切りのいい作劇だけれど、ワルに寄せた分、途中からケアとあまり関係ない犯罪絡みの方に話が寄りすぎた。もともとこの“ビジネス”は“合法的”だから他からケチをつけられなくなっているので、あまり非合法に寄ると話の大元が揺らぐことになる。
カネがあれば世の中黒も白になる、には違いないにせよ、見せかけは保つ必要はあるだろう。
ヒロインが母親に危害を加えるぞと脅されても、あんな毒親どうでもいいわというあたり、タフなのはいいしロザリンド⋅パイクの見せ場にはなるが、数々の危機を乗り越えていくあたりと共にちょっと人間離れした感じにもなった。
終始タバコをふかしていて、しかも鼻から煙を吐き出すといった具合にわかりやすくタフだが、全般にこの脚本演出はちょっと匠気が目立つ。
映画自体がケアそのものの問題を失念しているみたい。
公私ともにパートナーは女というのが脅すしか能のない男たちにとことん愛想を尽かしている感じ。
「ゲーム⋅オブ⋅スローンズ」のピーター⋅ディングレイジ(身長132cm)の登場にあれまと思う。なるほどこういう使い方があるか。