prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「SNS 少女たちの10日間」

2021年12月15日 | 映画
邦題に偽りありで、少女たちは出てこない。出てくるのは12歳に見える成人女性たち。というか、これは未成年を出さない、出してはいけないという倫理上につくられている。
その意味でこのタイトルは不必要に少女という言葉で気を引こうとしていないか、それは作品自体の狙いに反していないか疑問がある。

このドキュメンタリーの作者たちは、現在未成年たちがSNSを通じてどういう性的暴力に晒されているのか記録すべく、成人女性を未成年に仕立てて本物のSNS(主にFacebook)にフェイク写真やプロフィールをアップして、年少者に性的関心を持つ連中がアクセスしてくるのを待って撮影するという方法をとった。というか、待つまでもなくアップした途端に2000人以上が群がってくるのだから呆れてしまう。

この変態たちの変態ぶりがもう気持ち悪いのなんの。フェイクとはいえ子供相手に局部は見せるは、裸になれと命令するわ、獣姦の写真は送りつけるわ、犯罪現場の中継そのもの。
その中には青少年キャンプの指導者すらいるのだから、エンドタイトルで警察が介入したと出るのも当然。

この映画の公式サイトで監督が、
「正直に言うと、一つだけ私を非常に驚かせたことがありました。少なくとも10年間以上前から存在していた現象だとは知ってはいましたが、近年、少年少女たちが自分の裸体の価値に気付き、躊躇いもなくそれを売るようになったということです。ただ仲間外れにされたくない、ただ携帯のアプリが買いたい、というような単純な理由のために」
とあるが、日本でもそれは聞いたことがある。頭が痛い。

成人と未成年の線引きは自分のやることを判断でき責任をとれるところにあるだろうが、カネという一種の万能カードが絡むとその境界がボヤけてしまう。

とはいえ、このドキュメンタリーの手法自体がフェイクを初めから含んでいて倫理的に問題があるのは確か。
それをクリアするのに、法律、心理学など各種の専門家を待機させてはいるが、成人とはいえまだ若いモデルたちが相当な精神的ダメージを負ったのは想像にかたくない。
事前のインタビューで成人前にあれに類する経験をしていたこともちらっと語られる。その記憶が噴出してきたのかもという気もする。
ただ変態たちの所業があまりにひどいので、撮る側の倫理性がふっとんでしまった感はある。

彼女らがいるのは本物の家屋ではなくスタジオに作られたセットで、天窓からさす光まで作り物だが、カメラを通すと劇映画同様、まったくわからない。
フェイクとそうでないものとの見分けはおよそ難しい。

チェコ映画。チェコ語タイトルは V siti。 ネット上のチェコ語の辞書で引いてみると、Vは~の中で、šitíは裁縫、針仕事。うーん、意味がわからない。
英語タイトル(作中で話されるのはチェコ語だが、タイトル文字は英語)Caught in the Net 。