ずいぶんわからない映画で、いろいろ解釈してみないと意味が通じない、というか初めから解釈されるのを織り込んでいるみたいな作り。
史上最も古い映画、というか、実は一台のカメラで撮られたものではなく地面に何十台ものカメラを設置して、馬が地面に張ったワイヤを駆け抜けるのをシャッターにして撮った連続写真によって馬の走りの分解写真を撮った(連続映写すると動いて見える)実例が出てくる。
これをずっと後になって再現したのが「マトリックス」のバレット・タイムなのだが、ともかくこの時馬を走らせた騎手が黒人であることが触れられる。
つまりジョーダン·ピールがこれまでの作品でも扱ってきた、歴史上黒人の功績や占めるべき座を白人たちが奪ってきたのを知らしめる方法を映画とその周辺に応用したといえるだろう。
馬の調教師という職業もカウボーイとつながる。
アメリカ開拓史でカウボーイというとひとつのシンボルだが、実際に活動していたのはごく限られた期間で、むしろ西部劇映画に描かれた白人カウボーイがアメリカの歴史のイメージを作ったといえる。
UFO?が竜巻を起こして人を吸い上げるあたりは「オズの魔法使い」っぽい。これもアメリカの原像みたいな映画。
他の雲が動く中でその一部の雲が動かない、その後ろに飛行物体があるというカムフラージュ、というモチーフもオズっぽい。オズの国の支配者はコケ脅しのカムフラージュで民衆を支配していた。
わざわざカンザスというオズの舞台の地名を出しているし、妹の名前がエメラルドだが、オズの国はエメラルド製だし。
もうひとつ「2001年宇宙の旅」の知恵を持つと共に暴力的になるサルのモチーフも見える。実際にチンパンジーが人を襲った事件をもとにしているらしいが。
説明を配した表現の映画で70ミリ、シネラマの68年当時としては最大の映画フォーマットを採用したのが、現在だとIMAXを全面採用したのと通じるわけだろう。
馬を不必要に脅かすのは無神経に視界に入る時で、カメラで撮るという行為の一種の暴力性のメタファーなのかもしれない。
かなりの程度、映画史を踏まえてわざとオマージュっぽく見えないように(あからさまにオマージュをささげるスピルバーグやコッポラとは違う)ひねくれて表現しているみたい。
空飛ぶアレはカイメンのような海中の生物のようでもある。
スカイダンサーの群れも海中の海藻とかに見立てている感じ。空から見れば砂漠みたいな地上も海中みたいに生命が溢れているように見えるはずということか?