強面でならした刑事が強引なやりすぎ捜査と部下に怒鳴り散らすパワハラの内部告発で音楽隊に異動される、というストーリーからコメディかと思ったらかなり調子が違う。
つまり極端な男性原理でふるまってきて妻に逃げられ娘にも敬遠され母は認知症といったつらい状態なのにつらいと言えずにいる、いわゆる有害な男らしさに苦しめられている男が、音楽隊という本質的に争い合うのではなく協力しないと成り立たない世界で、特に子連れの女性交通課員との関わりで気づいて治癒していくのがテーマ。
その意味で内田英治監督の前作「ミッドナイトスワン」が男らしさから疎外されて苦しむ性同一性障害者を描いたのとはネガとポジみたいな関係にある。
ただコメディではないのはいいとして、笑えそうなところでもあまり笑えないのは娯楽映画としたらちょっと苦しい。
もっとも高齢女性を狙った詐欺を通り越した連続強盗事件とその捜査と解決のプロットの方はいささか雑過ぎ。
演奏されるのがごくポピュラーな曲ばかりなのは当然だけれど、音楽映画として盛り上げる工夫も欲しいところ。