1968年、当時23歳のテレビ制作会社社員だった青年が、表面的にはキャリア順調でも父との関係に発する悩みを抱えていて、いったん人生を考え直すべくそれまでとはまるで縁もゆかりもなかったインドのマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーのアシュラム(僧院)を訪れたところ、ちょうど「ホワイトアルバム」製作前、瞑想や東洋思想に傾倒していたジョージ・ハリスンが言い出してやはりインドに渡ったビートルズのメンバーとばったり会って8日間を共に過ごすことになる。
で、早く言うとそれがきっかけで人生を見直すことができて、今も無事に生きているという話。
スターらしさ、成功者らしさといったものはまったく見せなかったという。対照的に語られるのがディズニーの関係者が我々はどこまでいってもディズニーだが、君は違うのだねと語ったというエピソードが入る。
正直ほとんど綺麗ごとしか出てこないではないかと思うが、ごく短期間ですからね。また、影響は期間の長短によるわけではないのはわかる。
皮肉にも、というか、最もまとまってビートルズの曲作りの過程が記録されているのはDisney+の「ザ・ビートルズ Get Back」なんだよな。
リンゴが当時はかなり珍しかったろう8ミリカメラを持っていて、その扱い方を教わってリンゴの方を被写体にして撮ったという映像が出てくる。
その他、ビートルズのスナップが多数入ってきて、どれも撮られる側も撮る側も素直な感じ。
デヴィッド・リンチがインタビューに登場するのが凄い違和感だったのだが、この映画そのものの製作総指揮者に一人でもあるのだね。
瞑想について語るわけだけれど、作風とどう結びつくのか。
あいにくというか、当然ながらというか、ビートルズの曲そのものはかからない。一曲の権利金だけでドキュメンタリー一本の製作費の何倍もかかりかねないから仕方ないのだが。
当然脳内再生しながらかぶせて見ることになる。ラヴィ・シャンカールによるシタール音楽がどう世界に広がったかでも一本映画ができてしまうだろう。
ナレーションがモーガン・フリーマン。この映画そのものの製作は2020年だから、彼が2018年に#Me Too運動でセクハラを告発されて謝罪した後の仕事ということになる。IMDbで見ても、別に仕事減ってないのね。
インドの国際的な地位も、東洋思想のイメージもずいぶん変わったから、今見ると如何せんのどか過ぎる感じは否めない。
今でも彼らが泊まったコテージみたいな森の中の平屋建ての建物は残っているが、ごくしょぼい作り。
ただ、同時期に記念写真に写っているビートルズ以外の西洋人の参加者はどこに泊まっていたのだろう。